世界秩序の科学者
ノアの箱舟
第1話 始まりの日
ここは遠い遠い未来の話
人類が宇宙へと飛び立ち、星から星へ、また惑星から惑星へと移住出来るまで技術が発達した21世紀現在。
月面都市ルナ1 そこである実験を行なっていた。
とある科学者の物語―
遡る事1日前……
西暦2184年1月1日
月の月面都市ルナ1、そこにある実験室でミサトは実験を行なっていた。
他人が見たらまず間違い無く、散らかしてるとしか思えない程、辺りに機材が散乱していて秩序無く無重力でふわふわと浮かんでいるガラスビーカーや、ボールペン。
また他にも、何やら実験で起きたデータを事細かく書かれた紙など見える。
しかし、本人に取ってはこれは間違い無く必要であり、この状態こそが最適な状態だと言うのだろう
彼はそう言う人だ。
「まったく、いつになったら片付けを覚えてくれるのかな?あなたは…」
「何を言うか、この状態こそが無駄がないだろう」
「それは、君にとってと言う意味だろう!私にとっては最悪の状態だよ」
やはり、彼も想像してた通りの事を言って来た、最初のやり取りはもはや、挨拶の様な日課になりつつあった。いい加減嫌になる
「お?アリアじゃないか久しぶり」
「ん・・・貴方は?」
見慣れ人がいると思ったら、そこには懐かしい声が聞こえていた。
久しぶりに見るその姿は、2年前と変わらない姿だった。
「もしかしてユリウス?」
「そうだよ、僕はユリウス-ユリウス・マッケンシュタイン、まさか僕のことを忘れてしまったのかい?」
「もう、からかわないでよ」
顔を赤らめながら、冗談を言い合う二人、懐かしい光景。一軒すれば何の変哲のない会話
だけど、その会話こそ密かな楽しんでるユリウス。
イカツイ顔をした見た目から、周りから番犬と呼ばれてあだ名にされている。
見た目と性格が全くの反比例だから周りから変人と見られる事もしばしばだ。
「連絡も無しに突然来て驚かせて悪かったな」
「いや、良いよ久しぶりに会えて嬉しいし」
「私も久しぶり会えて嬉しいわ」
「そうか!良かった僕こそ会えて嬉しいよ」
ユリウス・マッケンシュタイン、略してユリウスと呼ばれるその人物は古き仲の研究仲間だ。
彼は決まって、突然何かが閃いた様に行動を決めたりする、だから急に来訪するのは1度や2度なんてものじゃないし、全く来ない事もある。
つまりこういうのは慣れっこだ。
「でも珍しいわね、あなたがここに来るなんで」
「今日は連邦樹立50周年!この日は月で過ごすと決めているのさ」
「そうか…そういやそうだったな」
それを聞きミサトは懐かしそうに上を見上げる。
西暦2184年 記念すべきこの年は、連邦政府の樹立の50周年となる。
まだ世界が国と国で別れていた頃、大きな争いがあった。
第三次世界大戦-通称-審判の日グラウンドゼロ
いつか始まってしまうのではないかと恐れられた核戦争は、テロリストが扱える様なくらい小さな、小型核爆弾を国誰かが作った事が原因で起きた。
テロがテロを呼び、憎しみが憎しみを産む悪循環。
その結果起きたのが、争いの後には人が住むことが出来なくなった焦土だけ・・・
あらゆるは破壊され人類は文明レベルを1世紀前に巻き戻した。
今思えば19世紀から21世紀までの旧史は全く変わらなかった、いや変われなかったと言う方が正しいのだろうか、世界は誰かが制する訳でも統一した世界政府が出来たわけでもない。
世界は全面核戦争に突入するまで、己が引き起こした愚かさに気づくことは出来なかった
人は過ちを繰り返す
「鉄と血と機械が世界であり、世界はそれが支配者となる」
私の父はそう言っていた、それがどういう意味なのか分からなかったが…恐らく旧世界のことを指してるんだろう。
まぁもっとも旧世界の記録なんてのはあの日以降のは殆どが残ってないから、真実がどうなってだなんて分からないし、確かめようがない。
なぜなら50億人の死者と、一部の備えを持っていた者以外は誰も生き残る事が出来なかったからだ。
今、分かっているのは戦後10年を経て、生き残った国々が過去の教訓を元に世界政府の樹立を成し遂げ、束の間の平和を享受する事が出来るようになっていたということだけ。
それが今の世界であり、歪な世界でもある。
「本当ユリウスは変わってるねぇ」
呆れながらもアリアはそう言った。
「ハハ!それはどう致しまして」
「そうだ良かったらこの後、実験を行なって行くんだけど良かったら手伝ってくれない?」
「えー・・・どうしようかな」
そうやって悩むそぶりをしながら、ユリウスは顔を俯け密かにニヤリと笑う。
3年前と全く変わらない、彼はいつも頼み事をされると悩むふりを
する、そして決まって嬉しそうにしつつも引き受けてくれるのが、彼のいい所でもある。
「じゃ、頼んだよ」
「ちょ!ちょっと待って!まだ引き受けるとは言って...」
「えーやってくれないの?」
そう言ってジト目で尋ねると溜息をつきながらも渋々了承してくれた。
「全くいつになったら完成できるんだ?もうあれから2年は経っているというのに」
「そうやすやすと実現できるなら苦労しないよ」
「そりゃそうか」
このプロジェクトの始まりは上手く言っていた、すでにある高速航行技術を応用してタイムワープの入口と出口は作れたからだ、しかしその後すぐに行き詰まりを見せた、なぜなら肝心の中身がないからだ。既存の惑星間航行用技術である加速装置は莫大なエネルギーとそれを制御する為の大規模な設備が必要になるが、その代わりその装置を使えば限りなく光に近い速度で航行する事が可能だ。
ただ、幾ら高速で移動出来ると言っても光速を超える速さで移動する事は出来ない。
このプロジェクトNovaが開発した電磁式加速装置24式”飛龍”はレールガンのように軌道上を
加速させる事で、移動している訳だが加速すると言うことは当然宇宙船内部には重力が発生する。
高速航行出来ると言っても、光に近い速度を出せば重力が物凄いわけで中の人間は耐えられないから、限界がある。
つまり、現在の技術ではせいぜい片道が人間の寿命で行ける範囲の星しか行けないと言う事でもある。
「機械なら寿命関係なく、どんな遠い星でも行けるかも知れない」と誰がが言った。
確かにそうかも知れないと、一時期は人工知能に宇宙調査や自動化が流行った時期がある。
しかし致命的な問題が有った。
ありとあらゆるトラブルに対して対応するを作ることが難しいからである。
たかだが数十年程度の人工知能の歴史では、人間を模倣する事はできてもそれから発想を飛躍させる事が難しいからでもある。
それにエネルギーの問題もある、生物である人間は食料と水に空気など最低限必要になるがそれさえ満たせば、最低限は活動していける。
機械はもっと簡単で電力さえあれば、活動が可能ではあるが電力を生成するには限りがある。
単純な惑星調査みたいな人工衛星ならばそれもいいだろう。
しかし複雑な動作をする宇宙放射線に耐える事が出来る高性能汎用ロボットを、何台も作る事は天文学な予算と人材が必要になるが、今の連邦政府はそこまで出せる余裕はない。
あれから50年は立つとは言え激減した人口と、人々がいなくなって荒れ果てた大地に、放射能汚染地帯となって人が住めなくなった死の領域など問題が山積みだからだ。
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