第一王女と、他国の英雄 4
「お久しぶりです。フェール様」
「……ええ、久しぶりね、ザウドック」
シードルとの謁見を終えたザウドックは早速、フェールの元へ訪れていた。久しぶりに見るフェールの姿に、ザウドックは胸を高鳴らせていた。
美しい水色の髪と金色の瞳を持つ少女。以前見た時よりも、大人っぽくなり、美しさに磨きがかかっている。
挨拶をした後、二人の間には沈黙が走った。
ザウドックは何と言い出すべきか悩んでいたのと、久しぶりに会うフェールがあまりにも美しくなっていたのもあって、固まってしまっていた。
「ザウドック?」
「あ、すみません。フェール様、凄く綺麗です」
黙っているザウドックにフェールは不思議そうな目をする。そんなフェールに、ザウドックははっとなったように返事を返す。思わず、本音である、フェールを綺麗と感じた気持ちをぽろりとこぼしてしまう。
「……まぁ」
「あ、すみません。急に……っ」
恥ずかしくなったのか、ザウドックの顔は朱色に染まっていた。出会った時と変わらない様子のザウドックに、フェールは思わず笑ってしまう。
「――あ、あのフェール様!」
「はい」
「……お、俺との、約束覚えてますか!?」
ザウドックはそう口にしながらも、こういう場面でどもってしまい、かっこよく言い切れない事に何とも言えない気持ちになる。
(もっとかっこよく言いたいと思っていたのだけど、やっぱり緊張する)
ザウドックはそんな事を考えながらも、真っ直ぐにフェールを見る。フェールはそんなザウドックを見て、微笑んでいる。
「ええ、覚えているわ」
「お、俺もずっと忘れてなかったです。だから……俺、頑張りました。フェール様との、約束を守りたかったから」
「……ええ」
「俺、『雷獣の騎士』と呼ばれるぐらいがんばりました。――だから、その……」
ザウドックはそう口にして、一旦黙り込む。
なんていうべきだろか、何を言えばいいだろうか。そういう気持ちで一杯になって、頭が真っ白になっている。
でも……、言わなければならない。此処まで来たのだから、自分の思うままに言わなければならない。
それに、ザウドックはフェールと結婚をしたいという思いを確かに心に抱いているのだから。
「―――フェール様、俺フェール様が好きです!!」
「……ええ」
「だから、そ、その……俺と結婚してください!!」
決意をしたザウドックは言った。フェールの事を好きだと、そして結婚してほしいのだと、そんな風に。
出会った時からずっとずっと惹かれていた王女様。その約束があったからこそ、ザウドックは二つ名を賜るぐらいまで頑張った。
言い切った後に、ザウドックは緊張して心臓をバクバクさせていた。
フェールはなんと答えるのだろうか——そんな思いでフェールを見つめる中、そのフェールの表情にザウドックは見惚れた。
美しく、微笑んでいた。
華が咲くような笑みを浮かべていた。
「――ふふっ」
そして、愛らしい笑い声を零していた。
「……貴方の、奥さんになってあげる」
そして、少しだけ恥ずかしそうに、フェールはそっぽを向いて、顔を赤くして、そう口にした。
「フェール様っ!!」
そしてその言葉の意味を理解したザウドックは、満面の笑みを浮かべるのだった。
それから、数か月後、カインズ王国の王女であるフェール・カインズと、トゥルイヤ王国の英雄である『雷獣の騎士』の婚姻が結ばれる事になった。そして、フェール・カインズはトゥルイヤ王国へと嫁いでいく事になったのだった。
――第一王女と、他国の英雄 4
(そしてカインズ王国の第一王女は『雷獣の騎士』に娶られていく事になる)
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