From two to me in the future

かまぼこ

Good Morning Friend?

「ようこそ新入り!ここはお前らみたいなクズでどうしようもないゴミが集まった隔離チーム、その名も犬の餌だ!名前の通りお前らは犬畜生の餌の価値しかないゴミってことだ!」


入ってそうそう罵声を浴びせられ、キョトンとした顔をする5人の男女。年齢は疎らで、ガキもいればおっさんもいた。

歩くのもやっとの老人がいないのが唯一の救いか?


「分かってるとは思うが、我々Unfixableは化け物を八つ裂きにするために作られた組織だ!目的は破壊!破壊だ!破壊以外には認めん!保護だとか、隔離だとかそういう腰抜けのような事を言ったやつはその口を溶接機で繋ぎとめてやるから覚悟しておけ!」


またも罵声。ずいぶんとキレやすい性格のようだ。婚期でも逃してるのかこの女は?

俺の心を読んだかのように俺を一睨みする。俺が睨み返すと興味をなくしたかのように話を続けた。


「……いいか?お前らは問題児の集まりだが、特別扱いはしない。いや、してやる。

お前らは戦いの最先端に行ってもらう。死ぬことは許さん。お前らを一生奴隷のように使ってやる。当然の権利だと思わないか?トラブルメーカー共?」


そう言って俺達問題児の顔を見渡す。フンっと鼻を鳴らしてそのまま立ち去る。

時間を見ると朝飯の時間だ。女狐のような奴でも腹は減るらしいな。


「えーとぉ……ご飯って僕たち食堂じゃなくてここで食べるらしいんですけどぉ……どこに取りに行けばいいんでしょうかぁ……」


「あぁ?知らねえよ。お前が全員分取りに行けよくそ女」


「えぇ!?そんなぁ……」


ナヨナヨした女がキョロキョロしながら喋るもんだから悪態をついてしまった。

問題児の集まりと言うが、この女からはそんな感じはしない。それを言ったら俺以外の全員に当てはまる事ではあるんだが……。


「まあまあ、オレとこいつが行きますんで、皆さんは席座って交流でも深めててくださいっす。慣れてるんで」


チャラい男がそう言うと、鬱でも患ってそうな地味な女を連れて外に出ていく。

いや~、何て言うか使いやすい奴らで助かるな!


どこが誰の席ってわけでもないから、皆黙って好きな席についていく。

俺が座った席の隣には、おっさんと……ん?こいつ誰だ?さっきまで居なかったと思うが……。


「ふあぁぁ……朝は眠いね~。夜から活動しない?」


「いや、誰だお前……?」


「私の名前はツー。君たちの上官でもあるし、仕事仲間とも言えるかな?偉そうにするつもりもないけど、コンゴトモヨロシク」


ニッコリと笑ったツーと言う少女。とても戦闘が出来そうな体とは思えない。

まだ中学生と言われても信じられるその貧相な肉体には、似つかわしくない主張の激しい胸が自信満々に揺れていた。


「すまん、胸がデカすぎて話に集中できんかった。もう一回頼めるかい?」


俺の隣にいたおっさんが食いついた。ちょっと待て、こいつ朝から何言ってんだ。

いや、気持ちはもちろんわかるんだが、そうじゃないだろ。


「あ、これ自在に大きさ変えられるからあんまり意味ないんだよね~。男は異性の胸の大きさで態度が変わるって本で読んだからさ~」


こいつの知識偏りすぎだろ。


「いや、ちょっと待て。自由に大きさ変えられるってどういうことだ?空気でも入れてんのか?」


「ん~ん。私、君たちが化け物って呼んでる存在だから。話は聞いたことあるでしょ?いつもはフードしてるから分からなかったかな。ほら、これでどう?」


そう言って服と一体化しているフードを頭に被せる。そういや、女狐の側にいつもいるやつか。今日はいないから別働かと思ったが、そうでもなかったらしい。


周りの奴らは特に驚いた様子もなくツーと言う少女と打ち解けていた。

俺一人マジマジとその女を見て、考え事に更けていた。

そんな俺の視線に気づいて、ツーはニンマリと笑って言う。


「な~に?一目惚れってやつ~?まいっちゃうなぁ~」


「それはない。って言うよりお前って何で俺らの組織にいるわけ?俺達人類の敵だろ?」


「ん~。難しい質問だな~。面白そうだったから、かな?人間が無様にバラバラにされるのも、どうしようもない存在に絶望している姿も最高じゃない?あ~でも、万が一にも勝ってくれたら嬉しいかな?私も気が向いたら手伝ってあげるからさ~」


なんだこいつ。化け物の割には随分と情緒が安定してるし、俺達と対等に会話をしている。俺達が知り、戦ってきた化け物たちは少なくとも俺達と対等な存在ではない。

奴らは俺達の数倍強いし、俺達を常に見下した存在だ。

化け物がどこから現れたのかもわからないし、俺達に知る術は存在しない。

知りたくもないが。


「戻りました~。あれ、その可愛い子誰っすか?」


「何か、急に沸いた」


「マジっすか!最近は女の子も沸く時代なんっすね~。ははは、いたたたたた!悪かった!悪かったから、つねらないでよ!ササちゃん!」


朝飯を取りに行っていたチャラ男と地味子が戻ってきた。どうやら恋仲らしい。

弁当落としたらぶっ飛ばす。

俺の心配とは裏腹に、弁当を全員の席に置くとツーの分が足りないことに気づく。


「あー……そういえば、さっきまで5人だと思ってたからツーちゃんの分が足りないっすね……申し訳ないっす。俺の食べるっすか?」


「ん~ん。大丈夫。この人のもらうから」


そう言って、どこから取り出したのかフォークで俺の弁当に入っていた鶏肉をもぎ取る。


「あっ!おい!!お前主食取るってマジか!?せめてこのポテトぐらいにしとけや!」


「あ~ごめんごめん。お腹空いてたからさ~。はい、じゃあ返すよ」


「お前涎まみれの物渡すなよ!あぁ、他の物にまで……」


一度口に入れたやつを俺の弁当に乗せる非常識な化け物女。こいつふざけてんのか?

もう今日は厄日だな。何をやっても絶対ダメな日になるんだよこういう日はな。

反論する気も起きなくて、ブスっとしながら飯を食っていると件のバカ女がとんでもないことを言った。


「ふふ……これって間接キスってやつだよね?笑える~~」


「ぶー!!」


口に入ってたものを全部吐き出す。目の前の席に座っていたトロくさそうな女に全部飛んでいった。


「あのぉ……僕はゴミ箱じゃないんですけどぉ……」


「あー……何て言うか、すまん……。こいつがくだらない事言うもんだからよ」


流石に申し訳なくて床に落ちてた雑巾を手渡す。


「ふぁ~ありがとうございますぅ」


嬉しそうに自分についた残飯を雑巾で拭き取る。それ、床用だけどいいのか……?

まぁ、本人があんなに嬉しそうならいいんだろう。良いことするって気分良いよな。

全員が食べ終わり(俺の飯はほとんど白米と野菜のみだったが)最年長のおっさんが口を開く。


「そろそろ自己紹介をしようか。今更感はあるが、ワシはこいつしか知らんからな」


俺の方を指さす。まあ、あんなことがあったし当然か……。

おっさんはそのまま話を続ける。


「まずは言い出しっぺのワシからしようかね。ワシの名前は、コロだ。コロ爺とでも呼んどくれ。前の隊では、斥候担当だった」


最年長のおっさんの名前はコロ爺。斥候担当。


「ぼ、僕の名前はフィー。前の隊では、医療担当でしたぁ。ここでもそうなると思いますぅ……」


トロくさそうな女の名前はフィー。医療担当。


「あ、オレの名前はゼイっす。前の隊では、強襲担当っす」


チャラ男の名前はゼイ。強襲担当。


「あたしの名前はササ。前の隊では、ゼイと同じ強襲担当」


地味子の名前はササ。強襲担当。


「……ニル。……通信担当」


無口で小さいガキの名前はニル。通信担当。


「俺の事は知らないやつはいないだろ。疫病神のヤクだ」


周りの視線が俺に向く。その視線から恨みのような哀れみのようなものを感じた。

そう、俺へ向く感情なんてこれでいいんだ。これが、普通だ。


「私の名前はツー。君たちが倒す化け物のうちの一人。だけど危害は加えないよ!

私は楽しいことが大好き~。私に害を及ぼさなければ私から君たちには何もしないよ~。これからは私がリーダー補佐するからよろしくね~女狐からもそう言われてるし~」


そう言えばこいつを忘れてた。リーダー補佐って言うけど、こいつ何出来んだよ。


「あ、そうそう。リーダーはヤクって聞いてるけど、皆いいよね?」


「はぁ!?拒否する!」


俺の意志や発言とは関係なく、周りは全員頷いていた。お前らめんどくさいだけだろ!ふざけんなよ!?


「最年長のワシが言うんだから間違いない。ヤクの目は指導者の目だ。ワシには分かる」


「いや~オレもそう思ってたんっすよ。ササもそう思うよな?」


「…………うん」


こいつら適当な事言いやがって!ササとかいう女も反応うっす!!


「どうせリーダーになったってならなくたって、たいして変わらないって~。

だからとりあえずリーダーやろ?私と一緒に化け物デートしようよ~。ね!お願い~」


「いやいやいや、化け物デートってそもそもなんだよ。命かけてんだよこっちは。

お前らみたいに超常現象起こしたり、増殖したり出来ないの。分かる?」


「それは分かってるけど。別に良くない~?リーダーになれれば私と一緒に寝たりとかも出来るよ?私のこと好きにしてもいいんだよ~?ね?ね?」


「巨乳モードなら考えてもいい」


「やったー!(ちょろいなぁ~)」


騙されたような気もするが、慰安みたいなもんだと思えばいいだろ。

サキュバスに夢見たあの日とは今は違うが、まあ見た目がそもそも良いからツーなら我慢できそうだ。サキュバスは見た目が化け物すぎてきつすぎたんだよな。

誘惑の能力で洗脳されそうになるわ、精気を吸い取るとか言われてたのに吸われてたのは血だったしで、お前は吸血鬼か!っての。男の夢を軽々しく壊すな!


「まぁ、何もなければ毎日休日みたいなもんだし、適当に交流でもするかい?若者達?」


「ん~、そうっすね。リーダー、どっか良いとこ知らないっすか?」


「俺に聞くんじゃねえよ。日常はお前らの好きにすりゃいいだろ。明日には誰か死んでるかもしれねえのに交流何てそもそもいるか?必要ねえだろ」


「そうでもないと思うけどな~。短い命恋せよ乙女!女は行動力!男は度胸!3度の飯より化け物退治!奇跡を待つな、奇跡を起こせ!って言うじゃない?」


「いやいや、どれも聞いたことねえわ。そもそも今の話にどれも関係ないしな。

まぁ、いいや。部屋の冷蔵庫何にもねえし、必要な物でも買い揃えようぜ」


「賛成!」


全員の声を揃えての了承。色々な部隊からのはみ出し者だけで構成された俺達は、

食べたものを片付けもせずに買い物に出かけた。

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