第35話
「やっ、確認は終わったかい?」
俺がステータス画面と睨めっこしていると、横合いからアクラリムがひょっこり顔を出した。
「ああ、ステータスを弄れるみたいなんだが、戦闘中はステータス画面ごちゃごちゃしてて確認しづらいかもしれん」
「それはねー、ステータス画面の丸っぽいところを押すと不要な項目は消しておけるよ」
「本当か?」
Lv.20
名前:オノ ユウジ
職業:英雄
生命力:49/49
精神力:34/39
筋力:44
魔力:43
敏捷:44
耐久:43(+38)
抗魔:43
◯状態異常
邪薔薇の血呪
◯魔法
ハイドアンドシーク(5)、隠者の極意
◯スキル
順応性2.1 直感1.7 隠密2.2 不意打ち1.7 潜伏1.6 隠蔽工作0.9 槍術0.9 鈍器1.0 棒術0.9 短剣2.0 見切り1.8 格闘1.1 逃走0.8 疲労回復0.8 強襲1.4 音消し0.9 精神安定1.3 戦闘技術1.5 思考加速1.3 威圧0.9 投擲1.0 一騎当千0.5 急所突き0.6 蹴技0.5
◯固有スキル
危険目視
再分配
「丸っぽいところ?この丸か?」
俺はステータス画面の◯の部分に意識を向ける。
Lv.20
名前:オノ ユウジ
職業:英雄
生命力:49/49
精神力:34/39
筋力:44
魔力:43
敏捷:44
耐久:43(+38)
抗魔:43
+状態異常 +魔法 +スキル +固有スキル
丸い円の部分に意識を集めると確かにスキルや魔法の欄が折りたたまれて圧縮される。
そういう機能があったのか。
「そういえば私もレベル20になったので新しいジョブが解放されたんですよ」
と、吉良さんが話に加わってきた。
吉良さんは俺より倒してる数は少ないはずだが、心なしかレベルアップが早い気がする。
「へえ、ジョブは何にするんだ?」
「呪術師にしました!」
「呪術師!?」
なんか物騒なジョブだな。
「新しく魔法が増えて、『ガンド』という指を指した相手にダメージを与える攻撃魔法が使えるようになりました」
「ダメージってどんな感じなんだろう。アクラリムはこの魔法知ってるか?」
「そだねー、『ガンド』はユグドラシル系統、この世界で言うところの北欧神話系統かな。魔力が低い内は相手の生命力を削ったり相手を不調にするだけだけど、魔力が上がると肉体を抉ったりできるよ」
「今のところは相手にデバフを掛ける魔法という認識で良いでしょうか」
相手の生命力を削るだけだと見た目じゃ分かりにくいからな。
「それじゃあゴブリンの残党が居るし新しい魔法の確認がてら殲滅していこうか」
「はい」
そういえば新しく覚えた隠者の極意は精神力を半分消費して1分間敏捷を2倍にするんだったか。
同じく新たに覚えたステータスを分配し直す固有スキルで敏捷に極振りした後に使ったらどうなるんだろう。
あ、筋力下がるから重そうな装備は外しておこう。
「『再分配』、敏捷極振り」
途端、世界の解像度が上がる。
正確には動いている物を見ようとした時に、時間がゆっくり流れるような感覚がある。
動体視力が上がっているのか。
「『ステータス』」
Lv.20
名前:オノ ユウジ
職業:英雄
生命力:49/49
精神力:34/39
筋力:1
魔力:1
敏捷:213
耐久:1(+18)
抗魔:1
+状態異常 +魔法 +スキル +固有スキル
敏捷値213……常人のおおよそ20倍か。
今ならばもしかしたら真正面から銃を撃たれても頑張れば銃弾を躱すことができるかもしれない。
ここから更に──。
「『隠者の極意』」
新しく覚えた敏捷値と同じ数値の敏捷値を加算する魔法。
更に世界が減速する。
Lv.20
名前:オノ ユウジ
職業:英雄
生命力:49/49
精神力:14/39
筋力:1
魔力:1
敏捷:213(+213:残59秒)
耐久:1(+18)
抗魔:1
+状態異常 +魔法 +スキル +固有スキル
目の前を漂う塵に目を凝らすと時間が止まったかのように静止して見える。
空気中を飛ぶ羽虫の羽ばたき回数までもが鮮明に数えられるかのようだ。
しかし……。
(体が重い……!筋力と耐久が1しかないせいか)
「『再分配』、平均値」
Lv.20
名前:オノ ユウジ
職業:英雄
生命力:49/49
精神力:14/39
筋力:44
魔力:43
敏捷:44(+213:残57秒)
耐久:43(+18)
抗魔:43
+状態異常 +魔法 +スキル +固有スキル
加算される数値は固定されたままなのか。
これはラッキーだ。
ご丁寧に残りの秒数まで書いてある。
「ごめん、少し先行する」
「え──」
駆け出すと共に吉良さんの声が一瞬にして遠のく。
危険目視スキルを用いてゴブリンの残党の位置を把握し、風のように地を蹴る。
体に重さを感じない。
ものの数秒でゴブリンが複数体いる部屋に辿り着き、ほぼドアを蹴破るようにして中へと突入する。
「ギ──」
即座にナイフを振り抜き、声をあげる前に全てのゴブリンの喉元を切り裂く。
「次」
仕留めた獲物には目もくれず、次なる標的を瞬時に定めて足を止めることなくその場を後にする。
───────────────────
1分が経過して魔法の効果が切れると同時に立ち止まってステータスを確認する。
「『ステータス』」
Lv.21
名前:オノ ユウジ
職業:英雄
生命力:54/54
精神力:20/44
筋力:50
魔力:48
敏捷:50
耐久:48(+18)
抗魔:48
+状態異常 +魔法 +スキル +固有スキル
ゴブリンではもう上がらないかと思っていたが、レベルアップしている。
全ての数値が5上昇……、いや、筋力と敏捷は6上昇している。
すごいなこの職業。
精神力は現在だいたい1分間で1回復するのでその気になれば『隠者の極意』を続けて使用できるかもしれない。
使うとしたら強敵相手のとっておきになりそうだが。
「『再分配』、筋力4割、敏捷4割、耐久1割、残りは適当に」
Lv.21
名前:オノ ユウジ
職業:英雄
生命力:54/54
精神力:20/44
筋力:98
魔力:12
敏捷:98
耐久:24(+18)
抗魔:12
+状態異常 +魔法 +スキル +固有スキル
よし、吉良さんと合流しよう。
……
「もうっ、びっくりしましたよ!」
吉良さんが頬っぺたを膨らませて珍しく怒っている。
「ご、ごめん。時間制限があって」
「まーまー、強くなるのは良いことだよ」
アクラリムはニコニコしながら俺と吉良さんの間に割って入る。
こいつはバトルジャンキーなので純粋に俺が強くなるのが嬉しいらしい。
「それじゃあ気を取り直して残りのゴブリンを狩りに行くか」
「はいっ」
俺は再び危険目視スキルを使ってゴブリンの位置を確認する。
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