セカイノオワリ

寺沢セイジ

第1話

まるで氷河期の氷が一気に爆発するような

大好きなあの子が巨大な鉄の塊に挟まれて

肉の筋をブチブチ引き裂かれ、骨をゴリゴリと潰されていくような


聴いたことのない音がする


僕は耳を両手で潰れるほど強く塞いで

聴くのを拒むけれど

その音は体の内側、僕のココロのあたりからじわじわと響いてくる


ふいに音が止む


両耳をおろすと、そのまま耳がポロッと落ちた

頬に伝う生暖かい体液

痛みは感じないがそれが余計に恐怖を増殖させる


頬を触ろうと顔に手をのばすと、スルッと手が滑って

皮膚が剥がれ落ちた

手のひらを見ると

爪はすでになく、指も第一関節までがかろうじてくっついているくらいで

その先はむき出しの骨がぐたりと垂れていた


遠くから鐘の音が響く

それは、自分の意識とは関係なく

体を呼ぶ音


鐘の音のする方角に向かって歩いていくが

動くたび

僕の腕や足からパラパラと肉が離れていく

両足を失った僕はなんとか肘だけで鐘の音を目指そうとするけれど


腹ばいになって、力を入れたその時

お腹がぱっくりと裂けて腸が飛び出した

でも痛みは感じない


進まなきゃいけない

なぜかそんな気がする

段々と景色が暗くなる

もう何も感じない、もう恐怖はない


ただ無心で

進む



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セカイノオワリ 寺沢セイジ @vodkaing

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