288カオス ガラケーばんざい

 連日のメダルラッシュに沸く東京オリンピック 。テレビで応援している方も多いと思います。わたしも皆さん同様、テレビで応援したいのですが、うちにはテレビがありません。


 猫の額ほどの広さを誇る我が家には、部屋の広さに不釣り合いなくらい大きなテレビがあるのですが、一台きりで、しかもわたしにはチャンネル権がないのであります(泣)


 一家の大黒柱たるわたしが「オリンピック 見たいんだけど」と訴えても、奥さんは「どこがおもしろいの、そんなもん」と取り合ってくれませんし、YouTubeを視聴中の息子(小学三年生)に「オリンピック にしよう」と水を向けても、「イヤ」と却下される始末。オリンピック中継を家族で楽しんでいる家庭があると聞くたびに――ああ、うらやましいなあ――とため息をついているのです。


 でも、ため息をついてばかりいても仕方がありません。手をこまねいていては、オリンピックが終わってしまいます。


 チャンネル権争奪戦に勝機を見出せないからには、戦略を変更する必要があります。そう。2台目のテレビを獲得するのです。


 しかし、価格が下がってきたとはいえ、テレビは安くありません。わずかばかりのお小遣いを使い切っては、始終ぴいぴい言っているわたしに捻出できる金額ではないのです。


 大きなテレビは買えないのなら、小さなテレビを買うというのはどうだろう。ラジオくらいの携帯型テレビなら安く買えるのでは……。Amazonで調べると、手頃なのが一万円くらいで買えそうです。


 ――イチマンエンかあ。


 わたしは金欠なのです……。


 ――まてよ。


 携帯型テレビは、フルセグが視聴できるものもありますが、ワンセグだけのもあります。ワンセグならむかし、ケータイで視聴できたよなあ――たしか古いケータイは捨てずに置いてる。押し入れのなかを引っ掻き回すと、出てきた、出てきました。10年近く前にお払い箱になったauのガラケーが。


 壊れたわけじゃないので、充電すれば動いてくれるはずです、充電器は……ボロボロですが、充電ランプは点灯しました。


 チャラリラ〜♪


 起動した!

 ワンセグもバッチリ受信します。画面はうちにあるテレビの数十分の1ですが、しっかりと小さな女子体操選手が演技している様子を見ることができたのです。こうしてわたしは、無事にわたしのテレビをゲットしたのでした。


 すごいですね、ガラケー。テレビが見れるなんて。iPhoneでは見れないですからね。


 ガラケーは、「ガラパゴスな携帯電話」という意味です。携帯電話の世界標準規格に合致しない日本独自の携帯電話を、絶海の孤島、ガラパゴス諸島で独自の進化を遂げてきた生き物になぞらえた造語です。日本独自の進化? 世界規格に合わない? 上等、上等、携帯電話なのにテレビが見れるなんて、ガラケー万歳ですよ(笑


 規格にあってないと不便だとか、世界で受け入れられないとか、いろいろ言われましたが、10年くらい経つと、使用感覚はまったくデメリットなかったと思い出されます。国際競争とか経済効率とか考えたら、規格にあってる方がいいのかもしれませんが、ただ使うだけなら便利な方がいいですから。


 世間の動向とか、消費者のニーズにばかり目を向けていると、ほんとに喜ばれているものから遠ざかっていくのかもしれないなと考えた、ガラケー始末でした。


 週末もオリンピック 見ます!

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