180カオス エッセイ1300文字

 今回は、読んだ本の紹介です。結構本は読んでますが、読んだ本をすべて紹介できているわけではないし、こういうふうに書くのは珍しいので、わかってもらえるかどうか……。


『余命3000文字』(村崎羯諦 小学館文庫)


「むらさきぎゃてい」さんらしいです。小説家になろうで書いている方です。帯によると年間純文学【文芸】ランキング第一位らしい。ま、この帯に惹かれて買ったんですけどね。


 すごいです。Web作家にあるまじき文章の巧みさです。この本には短い小説ばかり26篇も収められていますが、さまざまな語り口で読者を飽きさせるということがありません。かなりの文章巧者でいい方は変ですが、プロ級。


 作品には毒(というかうつろ?)が含まれています。注意が必要です。下に、各エピソードとわたしなりの一口要約、そして、中には「死」の文字が見えるエピソードも。これはその内に直接「死」が描かれたエピソードです。作品全体にネガティブな波動のようなものが感じられて、そこがちょっと気になるかな……。


 小説家になろうってほとんど読んだことがないのですが、一位になる作品ってこういう傾向があるのでしょうか? こういう「そこはかとなく絶望」みたいなのが、いまの流行? わからんわからん。


 エピソードはどれもこれも個性的で、どんな人でもひとつやふたつは「おもしろいな」というものが見つかると思います。


 表題作「余命3000文字」は、これはあれでしょ。3000文字縛りで小説を書くことになったときに思いついたやつ。Web作家なら一度はやりたくなるメタフィクション。ただし、タイトルだけ見ても「やられた」ってくらい、よく出来てます。一番よかったのは「おはようジョン・レノン」です。こういうのいいですね。あとは「顔に書いてある」です。まるでうちの夫婦のようで驚きました。




#1余命3000文字 小説と生きる意味 死

#2彼氏がサバ缶になった シュールラブコメ

#3心の洗濯屋さん 右傾化警戒

#4焼き殺せよ、恋心 見た目への劣等感

#5私は漢字が書けない 愛の偏在

#6笑う橋 虚栄心の滑稽さ

#7世界がそれを望んでいる 自己存在への不信 死

#8食べログ1.8のラーメン屋 ネット民の習性

#9終末のそれから ポストアポカプリス 死

#10それはミミズクのせいだよ 恋愛の不可解

#11影 失恋

#12骸骨倶楽部 高尚な精神を揶揄 死

#13おはよう、ジョン・レノン 戦う私を支えるもの 死

#14向日葵が聞こえる 承認欲求 死

#15パンクシュタット・スウィートオリオン・ハニーハニー 恋愛シュール

#16幼馴染証明書 行政の迷走

#17精神年齢10歳児 子供のような大人を揶揄

#18出産拒否 現実世界への絶望 死

#19不倫と花火 求心力を失った家族のなかで傷つく私

#20流れ星のお仕事 見た目による差別

#21死人のお世話 死を悼むこととは 死

#22何だかんだ銀座 ペットを飼うとはどういうことか

#23大誤算 結婚とはなにか 死

#24彼氏スイッチ 欲望による人間性の搾取 死

#25顔に書いてある 男女それぞれの身勝手

#26↑の先 人生の指針



 よくこんなにアイデアが出るもんです。脱帽。

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