136カオス 何事にもアンチはいるもの

 先日、NHKで放送されていたアニメ『銀河英雄伝説 DIE NEUE THESE』が終わりました。


 以前も書いたことがあるのですが、田中芳樹さんの長編SF小説『銀河英雄伝説』の新アニメシリーズです。


『銀河英雄伝説(以下「銀英伝」)』は、人類が地球から飛び出して星々にその活躍の場を移した遠い未来を舞台に、ふたつの星間国家「銀河帝国」と「自由惑星同盟」が、銀河の覇権をかけて争う――という物語です。


 1982年から刊行された銀英伝は、田中芳樹の名を高からしめた傑作長編ですが、40年近く経ってもなお、銀英伝が傑作と呼ばれ続けてる理由の一つに、最初にアニメ化されたシリーズが非常によくできていたことがあると考えています。アニメから銀英伝に入ったわたしは、なおのことそう感じるのかもしれませんが。


 2000年にアニメシリーズが終了した銀英伝でしたが、2018年にリメイクされます。冒頭に書いた『銀河英雄伝説 DIE NEUE THESE(以下「ノイエ銀英伝」)』です。

 NHKで放映されたノイエ銀英伝ですが、一部の旧アニメシリーズのファンからは評判が悪い。リメイク作品には必ずついて回るものなのですが、「古いものが良い、オリジナルが良い」という人は一定数いるものです。


 わたし自身、「ここは旧作の演出の方がよかったよな〜」というポイントがいくつもあります。が、そういうところも含めて、これがいまの銀英伝の解釈なのだろうと納得して楽しみました。(逆に、いいところもいっぱいある。艦隊戦とか、キルヒアイスがラインハルトを守って亡くなる場面とか……)


 アニメは脇に置いて、小説の話を。


 これも以前書いたのですがドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を読んでいます。わたしが読んでいるのは、光文社古典新訳文庫版、亀山郁夫訳の『カラマーゾフの兄弟』です。


 全5巻の長丁場。最初は「ぜんぜんおもしろくない」と思って読んでましたが、3巻辺りからドストエフスキーの文体と世界観にわたしがなじみはじめたのか、おもしろくなってきました(笑)いま読んでいるのは4巻の半ばくらいですが、楽しみ方がわかってきたのか、かなりおもしろいです。退屈せずに最後まで読めそうです。


 で、この亀山郁夫訳の『カラマーゾフの兄弟』。ノイエ銀英伝のように、批判する人がいるんですね。曰く「誤訳が多い」と。わたしは、ロシア語がまったく読めないので、亀山郁夫さんの訳がどの程度訳語としてふさわしいのか判断できません。でも、本質はノイエ銀英伝問題と同じだと考えてます。


 ノイエ銀英伝問題は、田中芳樹さんの原作世界をどうやってアニメに落とし込むかという方法論に関する議論であって、その方法はアニメ化する人によってさまざまに存在して構わないとわたしは思っています。極論すると、そこには田中芳樹さんの銀英伝はなくて、ノイエ銀英伝があるだけ。そして、それでいいんだと。


 亀山郁夫訳もそう。『カラマーゾフの兄弟』をロシア語から日本語に訳した時点で、ドストエフスキーのものではなくなる。そこからは亀山郁夫さんの『カラマーゾフの兄弟』になるだと思っています。

 ドストエフスキーの原作を読みたいのなら、ロシア語で読むしかない。だって、ロシア語で書かれたものこそ『カラマーゾフの兄弟』なんだから。


 亀山カラマーゾフ、おもしろいです。勢いつけて読んじゃいます(笑)では。

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