わたしと本の日々

55カオス コロナ騒動、拡大中

　新型コロナウイルスによる感染症に関するニュースをみていると、以前このエッセイでも触れたアルベール・カミュの『ペスト』を想起さざるを得ません。

　カミュの『ペスト』ではアルジェリアのオランという街でペストが発生し、感染拡大を防ぐため、外部との通行を封鎖されたオランでペストと戦う人たちを描いていていました。

　今回、新型肺炎騒ぎでは、中国の武漢が小説さながらに封鎖されました。

　――リアル『ペスト』だな。

　私だけでなく大勢の人がそう感じたことでしょう。

　一方、感染症の拡大はいっこうに収まらず、今では中国そのものが一種の鎖国状態となりつつあります。現実は、小説よりも規模が大きくで、その分だけ深刻です。

　カミュは『ペスト』の中で、封鎖されたオランに人々を追放状態にあると表現しましたが、現実に追放となった人は医療を施されるかどうかも危うい状態におかれています。

　横浜港に停泊中のクルーズ船『ダイヤモンドプリンセス』に乗った人々です。乗客、乗員あわせて3700名は、新型コロナウイルスに汚染された船内に、文字どおり閉じ込められています。

　船が海上にあることで完全に封鎖され、外界との交通が断たれた船内の人たちの絶望感は、明らかに小説を超えていると想像できます。

　――事実は小説よりも奇なり

　武漢やクルーズ船に取り残された人たちの気持ちを知るすべを、私はもちませんが「なんとかしてくれ」という叫びが聞こえてくるかのようなニュースが毎日流れてきます。一刻も早く、この危機的状態が終息してほしいと願わずにいられません。