40カオス あなたの信仰はなんですか

 あなたの信仰はなんですか?


 え、神さまと仏さまの違いすら判然としない? そうですか……。ざっくりいうと、神社にいるのが神さまで、お寺にいるのが仏さまです。あ、ざっくりし過ぎましたか(笑)


 NHK放送文化研究所が2018年に行った調査によると、日本人の62パーセントが「信仰している宗教はない」と回答しているらしいです。ちなみに次点は「仏教」で31パーセント。その次は「神道」で、これは3パーセントです。自分は無宗教と考えている人が圧倒的に多いんですね。


 私も、普段の生活に宗教的なものはありません。実家にはある仏壇は、今の家にはないですし、神棚もない。お守りひとつ持ってないし、数珠はあったはずだけど、どこにやってしまったやら。罰当たりなことです(笑)


 ただ、数珠に無関心なことをとらえて、罰当たりだなと感じる程度には、信仰心もあると言えなくもないですね。


『別冊NHK100分de名著 集中講義大乗仏教 こうしてブッダの教えは変容した』(佐々木閑 NHK出版)を読みました。今回も小説の話ではありません。


 でも、事実は小説より奇なり――おもしろかった。


 数珠うんぬんからもわかりますが、私は一応、仏教徒です。まったく熱心でないけど。実家の宗旨は「浄土真宗」。

 南無阿弥陀仏――と唱えるだけで、極楽往生まちがいなしと約束される、信徒でも「ほんまかいな」という教義の宗派です。


 今回読んだのは、日本の大乗仏教について簡単に解説された本なのですが、簡単に書かれているだけでも、目からウロコがポロポロ落ちてゆく知識が満載で、大満足な一冊でした。


 そもそも私は、実家の宗旨である浄土真宗の教えが、そのほかの仏教とかなり違うと感じていて――


 私は、位牌も、戒名も、卒塔婆も見たことありませんし、仏教なのにお釈迦さまを意識したことは全くない。なぜだ?


『集中講義大乗仏教』は、浄土教にも一章を割いてあって、他の宗派との違いがなんとなく分かってきました。やはり、かなり違うらしい。浄土真宗が拝んでいるのは、阿弥陀さまといって、お釈迦さまとは別の仏さまらしい。仏教というよりは、信仰の形態はキリスト教に近い宗教らしい!?


 ……うすうす気づいてましたが、宗教学者がそういうんだから、そうなんでしょう。なんなの、私たちが仏教だと思ってる「仏教」っていったい?





 本によると、もともとお釈迦さまがはじめた仏教と、いま日本で信仰されている仏教は、その教義がまったくといっていいほど違うらしい! まず、そのことにびっくり。キリスト教なら、何回も異端審問にかかってその度に異端と認定されるくらい、お釈迦さまの仏教と、いまの大乗仏教は異なっているようだ。


 生きている限り人は「生老病死」の苦悩から逃れられないと気づいたお釈迦さまが、なんとかこの苦悩から逃れる方法はないかと、修行と思索の末に悟ったのが、「釈迦の教え=仏教」です。(この辺の知識は、手塚治虫の『ブッダ』から予備知識あり)


「釈迦の仏教」は、唯一のブッダ(目覚めた人=お釈迦さま)の教えに従って、自己鍛錬を重ね、生老病死の苦悩から解放される境地に至ることを目的とする宗教であるのに対し、私たちが信仰する「大乗仏教」は、自己とは別の超越的な力(これが特定の仏さまであったり、お経であったりする)に導かれて、自身がブッダとなることを目的としているのです。


 自己鍛錬 → 悟り

 超越的力との出会い → ブッダとなる


 ふたつの仏教は、手段も目的も違うことが分かります。また、「釈迦の仏教」は、出家者(お坊さん)しか悟りの境地に至ることができない(これもブッダになれるわけではない)のに対して、「大乗仏教」は、だれであってもブッダになることができると教えています。


 ぜんぜんちがう。


 お釈迦さま(ブッダ)は本来ひとりだけのはずなのに、だれでもブッダになれるだなんて、むちゃくちゃですよ。


 さらに浄土教に至っては、大乗仏教ではブッダとなるはずの目的が、極楽浄土へ往生することに目的がすり替えられてしまっている始末。ここまでくると、これを仏教と呼んでいいのだろうか? と思えます。


 日本の大乗仏教は、ヒンドゥー教と変わらないとまで書いてあって驚きました。


 まさか!


 カースト制度を教義に組み込んでいるヒンドゥー教は、人に上下の区別はないと教える仏教とは相入れないものと思っていたのでショックでした。


 大変おもしろい本なので、興味がある人はぜひ手にとってみてください。「へえ〜」「なるほど」「知らなかった」と唸ることうけあいです。

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