片翼の天使

 

 部屋へ戻る僕の足取りは軽かった。

 なんだかんだ、この生活が楽しくなってる自分がいる。サクヤって結構気を使わなくていいし楽なんだよな。

 さて、サクヤと一緒に今日もトレーニング!!部屋の扉をバンッと思いきり開ける!!


「サクヤ!!起きて!今日もトレーニン……あ、ええと」


 扉を開いた先には一糸纏わぬ姿のサクヤがいた。背中も真っ白でその体には一切の傷は無い。戦士なだけあって体は引き締まっているし、それに…

 

 …は!?いや、僕はなにずっと見ているんだ!?

 

「ご!ごめんなさい!!」

 

 急いで開いた扉を閉める。

 後でサクヤがぷんすか怒るだろうけど仕方のない事だ、僕に非がある。それにしても、ノックを忘れるなんて悪いことしたな…。

 

 ファウランにあんなこと言われて焦ってたんだろうか…?

 とりあえず一旦落ち着かなければと扉に背をもたれかかった。

 

「はあ、何してるんだろ…」


 …と反省していると、観音開きの扉の片方が開いて服の襟が掴まれて部屋の中に引っ張り込まれる。

 

「うわぁあ!?」


 そのまま床に転がされる。イテテッ!

 何が起こったんだ?と見上げるとそこには…

 

「あんた…何勝手にどっか行こうとしてんのよ!!」


 真っ赤になって翼で体を隠しているサクヤがいた。

 

「いや、着替え中だったよね!?悪いと思って…」

「それで扉閉めたの…私の体が嫌だったのかと思って焦ったじゃない…」

「その…サクヤの体は綺麗だよ…?」


 サクヤは顔から首まで真っ赤になっていた。

 

「じゃあ、初めからそう言いなさいよ!ばかぁ!勝手に見て勝手にどっか行こうとして、私を不安にさせて!もう怒ったんだからぁ!!」

「分かったよ!ごめんって!サクヤの体に一瞬見とれました!これでいい?僕は行くからね!」


 そう言って出て行こうとする、僕の首根っこを掴んで部屋に引き戻す。


「のわぁ!?何するの!?」

「まま待ちなさいよ!今見とれたって言ったわよね!!」

「えぇ?いや…まあ」

「だだだったら…私を不安にさせた、、ばば罰よ!前の方も…その…」


 サクヤはその頬を上気させ、息遣いは荒い。そして体を隠している片翼をゆっくりとゆっくりと下げていく。

 

「いや…サクヤ!?待って!!」

「いいや…待たない!!それに朝からあんなこと言って…ムラムラすんのよ」

「サクヤ待ってよホントに!そんなに顔赤くするならやめちゃおうよ!」

「赤くなんかないもん!やるったらやる!!」


 翼はゆっくりとゆっくりと下がって…いや全く下がっていない。

 

「いや、翼全く下がってないじゃん!もうやめようよ!」

「ぷちん!もう怒った!絶対見せつけてやるんだから!」


 翼がぶわっと広げられた。

 形のいい胸…可愛らしいおへそ…そのすべてが純白だった。

 それに下も…ってまただ!またじっくりと見ちゃった…。

 

 急いで両手で目を覆う。

 

「サクヤ隠して!早く!見たくないよ!」

「ふふふ、これは罰なのよ…しっかり目に焼き付けなさい!」

「無理だよ、無理だって、これじゃ…僕の方が恥ずかしいよ!」

「駄目よ!目を開けなさい!罰にならないじゃない!…あ、この罰受けないならアルが裸になってね♪」


 サクヤの顔はずっと真っ赤だったがずっと楽しそうだった。


 ……

 

 …


 なんとか事態を収拾して、サクヤを着替えさせることに成功した。

 

「ふう、ほんとに疲れた…」

「なによ!アルだって喜んでたじゃない!」

「はいはい…もうそれでいいから、今日もトレーニングするよ…」


 朝からがっつり疲労してしまった。

 でも気を取り直して今日もリハビリだ!それが僕の仕事なんだから!

 しかし、サクヤからから返ってきた言葉は思っていたのとは全然違うものだった。

 

「ん?今日は用事できたから昨日みたいなことはできないわよ」

「え?」

「さっきお母さんからの使者が来て、会いに来いって言われたから、それに長い間会ってないしね…」


 伏し目がちに用事を教えてくれた。先ほどまでの笑顔は消えかかっている。

 そうか、引きこもってたから会いづらいのか…いや、それでも会うと決めたサクヤを褒めるべきなのか?色々な思考が交錯する。

 

 いや、でも言えることは一つだけか…

 

「サクヤ外に行くの辛いと思うけど頑張ってきてね!」


 自分の思いのたけを伝えた。

 しかし、サクヤは頭の上に?が浮かぶくらいの疑問の表情を浮かべる。

 

「は?何言ってるの?アルも来るのよ?」

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