男がモン娘と普通の女の子に襲われるこの世界で冒険者としてやってみよう

しんたろう

森の異変

ゴブリン娘たちの魔の手せまる!

 ハァッハァッ…


 僕は今全力で走っている。後ろからは「ガサッガササッ」ていう音。僕の姿は補足され、完全に追われている。

 右後ろから、左後ろからも音がする。集団だ。おそらくゴブリン娘の集団だろう。


「やばくないっ!?この状況?」


 ゴブリン娘…引いてモン娘全体は男を襲うことに必死なのである。性欲旺盛なのである。冒険者になる前に勉強したモン娘大全ではゴブリン娘につかまったら集団で強漢されると書いてあった。

 冒険者登録をする際にも受付のお姉さんに「こんなにきれいな男の子が冒険者になったら、モン娘が大喜びするだけ」って止められたなあ。


 ガササッ


「ヒャッハああ、かわいこちゃんげっとだぜえ!!ってわわわっ!!ぎゃああああ!!!い…痛い…」


 背後から跳んでくるゴブリン娘を間一髪でかわす。そのままの勢いで飛んで行ったゴブリン娘はシダの木に向かってぶつかっていった。

 

「やっぱり…ハァッ…ゴブリン娘だった…そりゃ狼娘ワーウルフとかに比べるとまだマシだけど…厳しい状況には変わりないなあ」


 他のモン娘に比べてゴブリン娘の体躯はちっちゃい。実際さっき飛び掛かってきたゴブリン娘も、一見140cm程の茶髪のかわいらしい女の子であった。額についたちっちゃい角がなければ、少女と見間違えていただろう。そのため、ゴブリン娘ならまだこの状況から逃げ切れる可能性はある。


「ええと、、思い出せ、ゴブリン娘を撒く方法…教科書にはなんて書いてあったけ?ゴブリン娘は鼻が利かないから物陰に隠れると良い、だったっけ?まあいいや、やってみよう」


 僕は30mほど先に見える大きな岩の後ろに隠れることに決めた。カバンの中に右手を突っ込んで直径7cm程の煙球を取り出す。これで一旦ゴブリン娘達からの視線を切る。このまま岩陰に突っ込んでもバレバレだからね…


「3,2,1,そらあああ!!よし上手くいった!!」


 上手いこと、岩陰に潜り込むことに成功した。ゴブリン娘達はまだ近くにいる。あとは息を潜めてやり過ごすだけ。


「おーーい!どこいったんだーー!」

「あたしたちが優しくしてやるからよー出てきなよー」

「おい!あたいこっち探すから、あんたはあっち探しな!」


 ゴブリン娘たちの少女のような透き通った声が聞こえてくる。僕は騙されないぞ、絶対に出ていくもんか。


 

 ばれないように、息を潜め…



 ゆっくり周囲を確認、周囲を……周囲を…ん?



「んぎゃああああああああああああああぁぁ!!!!」


「スンっスンっ!オスのいい匂い。くふっくふふっ」


 額にちっちゃな角を付けたゴブリン娘がそこにいた。

 そういえば、僕の読んだ教科書って<<女冒険者用モン娘対策大全>>だったっけ。

 ゴブリン娘って男の匂いにはめちゃくちゃ敏感じゃん…。










  

 


 僕は洞窟の中で手足に縄をかけられ転がされていた。

 転がされるといっても毛皮のマットの上に皮で作ったクッションの上に転がされている。

 丁重に丁重な扱いだ。


 周りを見渡せばゴブリン娘が4人こちらを観察している。

 おそらくここは、ゴブリン娘の巣穴だろう。最悪の状況を考えるならば他にも見張りや拙攻の存在を想定するべきであって、10人以上のゴブリン娘から逃げる算段を立てなければいけない。


 ここは、甘ったるい声を出して油断させよう。


「ねーえ、ここはぁどこぉなのぉ?」


 気持ち悪すぎて、我ながら自己嫌悪に陥るが仕様がない、生き残るためなのだ。あのサバイバルの達人ベアトリクスさんも言ってた「生き残るためには精神の枷を外さなければならない」と。


「おおぉおふ、こきょ、いや、、あの、こここ、ここは東の森の双子岩の横のオレらのす、住処だ」

「ば!バカ!何教えてんだよ!」

「いや、だってオヤビンあんなえっちい声聞いたら…オヤビンだって今顔ニヤついてるじゃんかよう」


 効果絶大すぎて、なんかその…ごめんなさい。


「ほっほ、お主ら男の扱いというものが全く分かっておらんな」

 後ろで見ていた銅茶色の髪をもった小さな(でも胸は大きな)女の子がでてきた。


「「ちょ!長老!」」

「男には強気で接さねばいかん!一瞬でも気を許すと、そこからは泥沼じゃぞ」

「さ!さすが長老だぜ!」

「まあ、まかせるのじゃ…おい!そこの男!ここから無事に帰れると思うてか?わしらは怖ーいゴブリン種じゃぞ…あんなことやこんなことされてもなんもおかしくないからのお」


 確かに、うろたえる少女たちを見てゴブリンってこんなものかとも考えたが、実際はそんなわけはないのだ。あいては第二次大魔戦記の時、多くの難民男性を恐怖に陥れたゴブリンなのだ。


「ぼ!坊や!」

「な、なに…」

「おおおお主のな、名前は何という」

「??アルノーって名前だけど…」

「おっおおかわいらしい名前じゃの!そ、それじゃあアルとでも呼ばせてもらおうかの」


「長老!あってすぐにあだ名呼びとか、なんてビッチなんすか!」

「さすが長老だな」


 こいつら、もしかして??

 しかし、長老を見て興奮した様子のオヤビンが立ち上がる。

 ???危ない、後ろで騒いでる部下とオヤビンを見て勘違いしかけた!油断するな!相手はあのゴブリンだ!

 


「よし、オレも負けてらんねぇ、アルノー!覚悟しろ」

 

 小さな足を目いっぱい大股でずかずかと、近づいてくる。

 ついに、やられるのか。初体験がゴブリンたちとか…精神を強く持たないと。

 ていうか、見た目は一見普通の少女なんだ、そんなに悲観することでもないかも?と自分を奮い立たせる。


 ずかずか、ずかずか…ぴた

 僕の目の前で止まる。


「おらぁ!!」


 オヤビンは意を決して、僕の手をぎゅっと握った。


「や!やったぞお前ら」

「オヤビン!すごい!どっ、どえっちっす!」

「やるのお、さすがはオヤビンじゃ!」


「これで、子供もできるし…おっおい!アルノー!ゴブリンに無理やりえっちっちされた気分はどうだ!?」


 分かった、この人たちあれだ。残念な方たちだ。

 数百年前から世界中起こっている、男性不足がゴブリンをここまで残念にしたのだろう。これなら人間の女性のほうが危ないかもしれない。

 そうと知ったらやり方は簡単だ。


「ねえねえ、君たちってもしかして処女なの?」

「バカ!そんなわけあるかあ!!」

「ちょっと膜があるだけで、やりまくりっすよ!!」 

「い…言えん、今日初めて男を見たとか言えんのじゃ…」


「そうなんだ、それだったらこんなの見ても全然なんともないよね、チラっチラっ」


 縛られた手でシャツの裾を小さくめくる、すると少女たちは夥しい量の鼻血をだして倒れていった。


「ふう…なんとかなってよかった。。さて、逃げないとってのわああああ

 いててて…」

 

 立ち上がったところをいきなり吹っ飛ばされた。みれば、僕のおなかのところに血走った目のゴブリン娘が抱き着いていた。

 あぁーーそういえば、もう一人いたっけ…。よく見れば、岩陰に隠れたときに、自前の嗅覚で見つけてきた娘だ。


「すんっすんすん!すぅううーーはぁ。すううううううううううう、はあ。すうっゲフゲフ」


 おなかに鼻をあてて、思う存分僕の匂いを楽しんでいるようだ。

 明らかに息を吐く量に比べて、息を吸う量が多すぎて時折むせているようだ。


「匂いを嗅がれているだけだけど、身動きが取れないな」


 140cm程のゴブリンといえども、人間の男よりは力が強い。それに手足が縛られていることもあって1mmたりともも動けない。

 

「すんっすん、おかしくなりそうです。おまたのところがきゅんきゅんしてます。くふふくふ」

「あぁーちょっとやばいかもしれない…」


 すると不意に、ゴブリンの首根っこがつかまれ、ビュゥウオ!!壁に向かって投げられる。

 べちっていう音とともに動かなくなってしまった。どうやら気絶したようだ。


 そこにいたのは人間の女冒険者であった。

 しかし、その顔は悲痛なものであり、声をかけるのも少し憚られるほどであった。

 僕は意を決して口を開く。


「あ、あの!おねえ「すまなかった!!!私がふがいないばかりに!!」


 いきなり、抱きしめられた。


「こんな、いたいけな少年がゴブリンの慰み者になってしまうとは…」

「あの…お姉さん…」

「不幸な少年…ああ…神よ」

 

 お姉さんは、優しげな眼で僕を見つめてくる。金髪のブロンドに碧眼、ぱっちりとした二重に長いまつげ、救い出してもらったことも相まって女神にも間違えてしまいそうだった。

 しかし、僕はこの人を女神と間違えることはない。なぜなら…


「おねえさん……どさくさに紛れて僕のシャツとパンツに手を入れるのはやめてください…」






 僕はこの世界で冒険者として大成できるのだろうか…心配だ…

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