第143話 お嬢様は取扱いご注意
リュッグ達が請け負った今回の仕事は他でもない。
ルイファーン嬢をサッファーレイからマサウラームの町まで送り届けること。もちろん護衛も込みだが、そちらはお付きの私兵がいるのでさほどリュッグ達が負担を強いられることはない。
問題は―――
「はい、リュッグさま。アーン♪」
「い、いやその……一人で食べれます。それに近いですから」
当の
「なるほど、リュッグ殿がこの仕事……相当気乗りしていなかったのも道理だな」
ゴウは料理を軽くつまみながら、ルイファーンにべったりされてるリュッグを哀れんだ。
「? 美人、好かれる。リュッグ、嬉しく……ない?」
ムーも料理をハムハムしながら二人を眺める。双子姉妹もリュッグは好ましい異性として見てはいるが、ルイファーンほど固執的ではない。
「ねー。リュッグなら10人20人、若いコ囲ってもおかしくないのにー」
むしろ認めている男がモテモテなのは、高い価値を証明しているも同然なので良しとすら思っている。
この辺の双子姉妹の価値観は、アサマラ共和国に姫として生まれ育った過去も関係していた。
「リュッグ様がお好かれになっているのは良い事だと思われますが……何か問題があるのでしょうか??」
シャルーアも、男女の交わりとはあれくらいは当然で、むしろ自分が考える男女の交流とはアレが最低限くらいなのではないか、とすら思っている。
なので、4人の中でリュッグの気苦労を理解しているのは、ゴウだけだった。
「リュッグ殿は性格的に、異性とは適切な距離感を置きたいと思われる御仁だ。あまりに積極的にベタベタされると困ってしまわれる……まぁ普通であれば引っぺがして遠ざければよいだけの事なのだが……周囲の者を見てみるといい」
そう言ってゴウが示したのは、二人の周囲で戸惑いながら世話に奔走している侍従や私兵達だった。
「あー、そゆことね。納得」
「……相手、王族の、血筋……周り、
「そういう事だ。それゆえリュッグ殿も、ハッキリとNOとは言えない―――いや、NOと言ってはいるのだろうが、あのルイファーン嬢とやらを見るに、まず簡単にあきらめない性格……むしろ、NOと言われた方が燃え上がる可能性すらあるやもしれん」
しかも聞く限りだと、彼女の親は相当な子煩悩だという。
ルイファーンの頼みなら、親子ともどもリュッグを婿に迎え入れようとしてもおかしくないだろう。
「それでは、リュッグ様はルイファーン様とご成婚なされるのでしょうか、ゴウ様?」
「はい、シャルーアさん! おそらくは逃げ切れないでしょうね、今回の指名も要人の送迎というのは口実で、リュッグ殿を捕まえるためと考えるのが自然かと思われます」
「ゴウゴー、テンション……上がりすぎ」
「分かりやすすぎると、逆に引かれちゃうよー?」
もはやすっかり当たり前になった、ムー・ナー姉妹vsゴウの応酬の始まりを横目に、シャルーアは黙々と料理をほおばっていく。
しかし舌鼓を打ちながらも、彼女は彼女で少し悩んでいた。
父親は褐色肌の現地人だが、母親がエウロパ圏生まれの女性で白肌の美女。その母の血を色濃く受け継いだからか、ルイファーンの肌色は薄めの褐色で、髪は白金のブロンド、瞳も深いブルーグリーン。
そのスタイルも女性として均整のとれた魅力ある凹凸とラインを有し、望めばどんな男も射止められるであろう容姿の持ち主だ。
『~~♪』
オアシスの水を汲みあげて
「………」
この日シャルーアは、同性ということでそのシャワー室利用中に、その入り口の護衛に指名され、待機していた。
サッファーレイについてから今日で5日目。当然のようにルイファーンはマサウラームの町に帰ろうとする様子をまったく見せない。
『そこのアナタ、中に入ってくださいな』
不意にルイファーンに話しかけられ、シャルーアは思わずキョロキョロと左右を見た。
一応遠巻きに護衛の私兵が待機してはいるものの、距離から考えて話しかけられたのは自分で間違いなさそうだと確認すると、言われた通りに仕切りのカーテンの向こうへと入る。
ビシャァ
「まぁ……、まさか服のままいらっしゃるなんて。すみません
完全にずぶ濡れになったシャルーアを前に、全裸のルイファーンが謝罪を込めて頭を下げた。
「えと……大丈夫ですので、どうか頭をお上げください」
リュッグへの積極攻勢の様子しか見てないから、今までその人となりが今一つ分らなかったが、どうやら悪い人ではなさそうとシャルーアは安堵した。
彼女もお嬢様育ちだ。小さいころ、権力やお金を持つ者の中に嫌な性格の人間がいるのを垣間見た事がある。
そういう類の人間でなかったと判明して、気持ちがとても楽になった。
「一緒に入って背中を流して欲しかったのですけど……ちょうど良いですわね、服を脱いでこちらに来てくださいな。後でアナタの分も新しい
悪い人ではないがちゃっかりしている。でも嫌な感じはしない。
そのままずぶ濡れになった服の脱衣を促され、シャルーアは素直に脱ぎだした。するとルイファーンはその布地の一部を何気なく手に取り、確かめるように何度か指を滑らせ―――目を見開いた。
「……この生地……かなり良い、いえ、相当なモノでは?」
「? そう……なのでしょうか?? お父様とお母様が用意してくださったモノなので、私はあまりよくわかりません……」
そこからシャルーアに興味が出たルイファーンによって、シャワー室は二人の全裸女性のおしゃべり場と化した。
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