脳筋妹を聖女にできるのは俺の愚者スキルだけ。
緋雁✿ひかり
第一章 コンタクト 編
第一話 見知らぬ森
プロローグ.車両消失
「それでは、ここで速報が入ってきました。……服部さん?」
『…………』
「服部さん? 聞こえますか?」
『……あ! はい、聞こえます!』
「後ろに見えるのは……
『はい、私は今、山手線の高輪ゲートウェイ駅前に来ています。実はつい先ほど、十三時三十六分着の内回り線の電車に、信じられないことが起りました』
「信じられないこと……と言いますと、どういったことでしょう?」
『はい。山手線の電車はすべて十一両で編成されているんですが、品川から高輪ゲートウェイ間、約三分の間に、なんと、車両が一両消えてしまったんです』
「消えた……と、言いますと、どういうことでしょう?」
『文字通りの意味です。消えたんです。跡形もなく——』
「ちょ、ちょっと待ってください……」
『忽然と……あっ、はい、何でしょう?』
「消えた、というのは……例えば何かの錯覚であるとか、火災や爆発などの事故によるものだとか、そういうことではないんですか?」
『違います。品川駅を十三時三十二分に出たときには確かに十一両だった電車が、高輪ゲートウェイ駅に到着した時には十両になっていた、ということです』
「説明を聞いても、まだよく意味が呑み込めないんですが……」
『私や、JR関係者も、今の関川さんとまったく同じ感想です。とにかく、消えたんです』
「念のためもう一度確認しますが、最初から、何らかの手違いで十両編成で走っていたということではないんですね?」
『はい。それは私も関係者に確認しましたが、万が一そんなことがあっても始発ですぐに気がつくはずですし、駅に設置されている防犯カメラでも、品川駅の時点では確かに十一両あったことは確認できています』
「該当の車両に乗っていた乗客のみなさんは、どうなったのでしょう?」
『確認したところ、消えたのは最後尾から二両目……つまり十号車であることは分かっているんですが、誰が乗っていたかまでは確認できていない状況です』
「休日の昼間で、しかもかなり後尾の車両ですから、それほど乗客は多くはないですよね? 警察に行方不明者の情報などは入っていないんでしょうか?」
『今のところ、私の方には情報は入っておりません。現在警察の方で、各駅の防犯カメラを確認して乗客の顔などを分析している最中とのことですが、詳しいことはまだ分かっていません』
「そうですか……。最後尾の車両と九号車の連結はどうなっているのでしょう? 普通に繋がっているんですか?」
『はい。まるで、最初から十両編成だったかのように、自然に連結されています」
「なるほど……本当に不思議ですね」
『そうなんです。関係者の一人は超常現象が起こったとしか説明がつかない、と首を捻っています。現場からは以上です』
「引き続き、気をつけて取材を続けてください。何か分かりましたら、またお願いします」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます