第十六話 試験
翌朝。
宿で朝食を食べたミレイは早速冒険者ギルドへと向かった。まだ朝一の鐘がなってから一時間も経っていないこともありまだギルドにはまだ冒険者が殆ど来ておらずすいていた。
受付に昇格試験のことで来たことを伝えると、すぐに受付のお姉さんはギルドマスターを呼びに向かった。
その後すぐにマスター室に案内された。
「早いな嬢ちゃん!」
「試験が楽しみで早起きしちゃいました」
「そうか。じゃが早く来てもらったところ悪いんじだがまだ試験官を務める冒険者が来ていないんだ。もう少し待ってもらっていいかの?」
「はい、大丈夫ですよ」
笑顔で返事をする。
その後、受付にお姉さんが二人分のお茶とお菓子を持ってきてくれる。
「それでも飲みながら待っていてくれ」
ありがたく頂くことにした。
私は待っている間に精霊達に魔力を分け与えていく。
そして待つこと一時間ぐらいして一人の冒険者がマスター室に入ってきた。腰には剣を下げて鎧を付けている典型的な前衛職冒険者に見える。年齢的にまだ四十代くらいだろう。
「すまね~。遅くなった」
男は申し訳なさそうな顔で言ってくる。
「遅いぞい。約束の時間からもう一時間も過ぎておるぞ」
そんなに過ぎてたの! 私が早く来すぎただけだと思ったのに。
「わり~な。それでそこにいる嬢ちゃんが試験を受ける冒険者なのか?」
「初めまして、先日冒険者登録いたしましたミレイ=サルシャと申します。本日はよろしくお願いいたします」
「これは失礼した。俺はAランク冒険者をしているグレイ=レリアだ。こちらこそよろしく頼む。待たせちまってすまなかったな」
「いえいえ、こちらこそお忙しい中試験管を引き受けていただきありがとうございます」
頭を下げる。
「お互い自己紹介もすんだ見たいじゃし今回の試験の内容について話してよいか?」
「はい大丈夫です」
「いいぜ」
「それじゃそグレイもそこのイスに座ってくれ」
ギルドマスターの言葉に従いイスに座るグレイさん。
「改めて今回の試験無いようだが、嬢ちゃんには中級ダンジョンに挑戦してもらう」
「おいそれちょっと無茶じゃねえか?」
「そんな事は無いさ、昨日も話したであろう。この嬢ちゃんは冒険者登録した次の日にソロで初級ダンジョンを攻略しよった。それに今回は中級ダンジョンの五階層まで行ってもらうだけじゃ。そこまでなら初級ダンジョンと殆ど変わらぬだろ」
「確かに、それなら大丈夫か」
まだ少し納得してない感じのグレイさん。
「嬢ちゃんもそれでよいか?」
「はい、別に最上階まででも大丈夫ですよ」
凄くやる気満々に答える
「心強い返事だ。他の冒険者も嬢ちゃんのようだったらいいんだがな」
「今その話しをしても仕方ないだろう」
「そうじゃの」
二人の話が理解できないでいるミレイ。
「五階層って言っても、ボスまで倒すか?」
「ああ、ボスまで倒して戻ってくる事が出来れば合格じゃ」
それ位なら余裕だね。ただ試験管がいるから火と風、回復の魔法以外使えないんだよね。
ミレイは別の事で頭を悩ませていた。それでも中級くらいならなんとかなると思っている。
「グレイは監視のみで手を出すなよ」
「分かってるさ。だが嬢ちゃんの生死に関わるような状況になったら手を出すぜ」
「それは構わんと言うよりもそのときの為についていってもらうようなものなのだからな。じゃがもしお主が手を出した時点今回の試験は終了となり嬢ちゃんのCランク昇格は見送りになるからの」
「はい、分かりました!」
まあそんな事無いけど。
「今回の試験についての説明これで終わりになるが何か質問はあるか?」
「特に無いで~す」
「俺もないぜ」
二人とも質問はなく、試験開始となった。
最後にギルドマスターに一礼をしてマスター室を後にして中級ダンジョンへと向かう。
ミレイ達がいなくなったマスター室。
「気を付けるのじゃ」
窓から外を見ながら独り言を呟いておるマスター。
「格好付けながら独り言を言っているのですか、マスター」
受付のお姉さんがマスター室に入ってきた。
「お前、ノックもなし入ってくるんでない」
顔を赤くしながら言う。
「ノックなら何回もしましたが返事がなかったんです」
「それはすまなかった」
「何か気がかりな事でもあるんですか?」
マスターの様子からもしかしたら今回のミレイの試験で何か気がかりでもあるのかと思い聞いて見る。
「ここ数ヶ月で他の街で新たなダンジョンが誕生しているのじゃ。しかも調査の結果人為的に生み出されているかも知れないと言う話しだ。もしか知るとこの街でも何かが起こるかも知れないと思っての」
「そんな考えすぎですよ。それに新たなダンジョンが誕生してるだけで事件が起こってるわけではないんですよね」
「まあそだがな」
「それにこの街に一番の冒険者のグレイさんが付いているんだから何かあっても大丈夫ですよ」
「それもそうだな」
ミレイ達の知らない所でそんな話しをしているギルドマスター達であった。
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