戦うことが嫌になり自由に生きたいのですが日々戦闘を繰り返しています
マカベクロウ
序
第1話 敗北
目を開けるとそこに写っていたのは真っ赤な空
「ん?」
いきなり何?と思う人がいるだろうが、俺の瞳には本当に空が真っ赤だった
今見ているこの空を表現するならば、地上に生息しているありとあらゆる生物の血液を吸ったかのようなドス黒い血の色が空に広がっていると言ったところだろう。
何を言っているんだこいつ
頭がおかしいんじゃないか?
そう思われても仕方がない
変なことを言っていると自分でも自覚している。
だってそう見えているのだから。
でも俺は少しでも頭がおかしい奴だと思われないよう俺は目を擦った
そうすると何の変哲も無い青い空が空に広がっている
血が目に溜まっていて空が赤く見えていただけだった。
顔についている血を拭い、口に溜まった血を吐き捨てる。
そんな俺は大の字で倒れ、全身傷だらけであちこちの骨が折れている状態
誰が見てもわかる程の重傷だった。
「あぁ、身体中がイテェ」
自分の状態に気づいたことで麻痺していた感覚が戻り、身体中に激痛が走る。
そんな状態の俺、周りには誰もいないので自分で治療するしかない。
でも回復に当てる魔力が残っていなかった。
「くそっ」
ズボンのポケットを弄りポーションが残っているかを確認するが、全て使い切っていて一本もない。
「…マジか 仕方がない」
助けを呼ぼうにも先ほど言ったように周囲には自分以外誰もいない
この痛みに耐えながら死なないように魔力が回復するまで待つしかない。
「あぁーあ、ついてない」
何でボロボロの状態で倒れているのか
それは戦っていた
何と戦っていたかは言いたくない
ネタバレになるからな
でも言わなきゃわからないからこの場では「そいつ」と呼ぼう
本人の前で言ったら怒られるが
まぁ、そいつとの戦いは、俺にとって敗北が許されなかった。
何故許されないのか、ただ負けるのが嫌だっただけ
でも負けた。
しょうがない。
弱いから負けた それだけのこと
というよりも結果は最初からわかっていた。
初めから勝てないって
なら何で勝負を挑んだのか?
何でだろうな、自分でもわからない
言っておくが酒に酔って勢いでなんて事はない。
素の状態で挑んだ真剣勝負
そして文句がつけようが無い人生でたった一度の敗北を喫した。
不思議と悔しさはない、逆にスッキリした気分になっている。
別に俺が周りに期待されていたわけでもない
何にも背負うものがない状態での勝負だった
でも何か重圧を感じてたのかな?
だって体が軽く感じるから、倒れている状態で何言ってんだと思うけど
だからと言ってもう一度挑もうとは思わない。
もう一度挑んだところで勝てる気がしない
実力の差はハッキリとわかった。
「ハハッ、終わった終わった
俺はもう ここで終わりだ」
最初から■■を目指すなんて間違っていたんだ
でも誰だって一度は■■を目指して見たくなる
そういう時代。
勇者に選ばれた者は自分がこの世界で一番優れているのだと思い込む
高ランク冒険者であれば勇者に選ばれなくとも実力は勇者より上だと思う
俺は違う
勇者でも高ランク冒険者でもない
そこら辺の人間と変わらない普通の人間の筈だ
でも■■がどんなものか気になって少しだけ目指した。
結果、このザマだ。
たった一度の敗北
俺は誰もが一度は目指す[■■]を諦めた。
これからどうするかは決まっている。
もう戦いは懲り懲りだ
何にも縛られずに自由に生きたい
そのためには死なないように魔力が回復するのを待つしかない
俺は目を瞑り眠った。
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