円卓の獅子達

regulus

女神

我ながらよくここまで登り詰めたもんだと思う。窓際からは私の登場を今か今かと待ち構えた国民が見える。そして‥‥‥

「「凰縁こうえん。」」

右後ろにはラーオス。左後ろにはタランテという輝かしい二人の副官が私を支えるように立っている。

「ふっ…。」

「どうされましたか?凰縁こうえん?」

優しげに微笑むタランテは童顔も合間ってずいぶん幼く見えた。

「何でもないよ。今は此処にいる三人だけさランテ。」

を思いっきり抱きしめ頭を撫でる。ふわふわとウェーブした赤毛を優しくすくように。

「あぁっ!髪が崩れるから止めてください。凰縁こうえん!って、ラーオス殿も止めてください!」

「はっは!良いじゃないか!将軍凰縁こうえん自らの御手だぞ。頭が良くなるさ!」

「あなた様より頭はよろしくってよ!」

赤毛を振り乱しラーオスに掴みかかる彼女に昔の可憐な面影はない。それを横目に見ながら豪奢な椅子に座り紅茶を入れる。

「君らも変わったな。」

「私たちは凰縁こうえんの変わりようの方が驚きましたわ。」

「あぁ、最初はどう見ても妖精って感じだったんだが今じゃパラスの方が似合う。」

「あっはっは!将軍冥利につきるじゃないか!」

けらけらと高らかに笑いながらラーオスの背中を力一杯ぶっ叩く。仮にも上司にに対して失礼極まりないなこの男。だから上部から雑に扱われるのだ。

「いってぇ‥‥‥本当に変わったな。」

「ふんっ。ランテは良い子だというのにお前は可愛げないぞ。ラーオス。」

思いっきり皮肉を込めて名を呼んだら青筋がたったのが見えた。

「……なんだとこの女狐が!」

「ふん!私は狐でも虎の威を借る必要などない狐なんだよ!この駄犬が!」

「狼と犬は違うんだよ。鶏頭!」

端から見ればテーバの大輪の薔薇と狼の軍神と呼ばれる二人が馴れ合っているように見えるが、近くによれば子供じみた喧嘩をランテが許すはずもなくドレスのスリットから覗く足でラーオスの膝裏を容赦なく叩く。

「お二人とも少し落ち付きを覚えてください。ラーオス。あと5分もしたら姉様の円卓就任式なのですよ。側近筆頭‥‥‥凰縁軍の副官のあなたがこのような姿を晒すのはよろしくない」

超が付くほどの正論にぐうの音も出ない。出会った頃から彼女にラーオスは敵わない。元から気が強く負けん気も人一倍あった彼女は精神的上位者なのだ。地位も実力も精神力も揃った私には何も手出ししないが同じ副官であるラーオスには物凄く当たりが強い。私が上に立ちランテが下を押さえてラーオスが中間を和ませる。この形で何年もやって来て今年で私は20歳になった。いつもと変わらない、日常だ。その時にノックが三回。時間だ。私は椅子から立ち上がり二人を引き連れ廻廊を歩く。即位の扉の前で振り向く。

「二人とも‥‥‥もう一度聞くな。」


私にすべてをかける覚悟はあるか?


「もちろん。俺はお前のためなら」

「私はあなたのためならば」


地位も名誉も命も‥‥‥すべてを賭けても良い


二人は笑い私の背中を押した。扉は開かれ私は足を踏み出す。前のことも今のことも思い出しながら‥‥‥。

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