双子神1

本を見せながらここに来た経緯をざっくりと話し終えた時には濁った空気が充満していた。

「と‥‥‥取り敢えず何か話しましょう。アポは最近何かありまして?」

アルテミスは気を使っているのかアポロンに話かけ始めた。

「あぁ、この前めっちゃ可愛い女の子に求婚したんだけどさ、彼氏がいるんだかなんだかバッサリ振られちゃった。」

「アポお戯れが過ぎますよ。まあ、下半身に脳が出来たような貴方にフラれたとわかる知恵がついていることは称賛に値しますけれど。」

「案外毒舌家なのですね。アルテミス様。」

「アル。」

「?」

「アルと呼んでくださいな。こうちゃん。」

「俺もアポでいいぜ。おう!」

「は、はぁ‥‥‥。しかしながら曲がりなりにも神に様を付けないというのはどうも落ち着きませんね。」

「良いのです。私とアポの父でもあるゼウス様は人間に魂を吹き込んだ。私たちから見れば兄妹のような者です。それに私達も今はおんなじぐらいの姿してますし。」

「俺らはメジャーな神だけどなその分あんまりタメ語使わないし使われないからな。お前も敬語やめとけ。どうせ使っても使わなくても怒られることはないさ。」

「ですが‥‥‥」

「「では命令/です!タメ語を使え/いなさい!」」

「あっ、あぁ‥‥‥。分かった。フレンドリーな神なんだな。お前らもぺルさんも。」

「ギリシャ神は限りなく易しく言ってもフレンドリーとは言わない。」

「そうですわね。的確に言うなら」


「「雑」」


「その一言ですむ。」

「‥‥‥アポ。それを言ったら終いだぞ。」

あまりにも赤裸々な言葉にさっきまであった遠慮と言うものが粉々に砕け散った。

「えっと、こうちゃん。それは暗黙と言う美学です。」

「美や誉れって物は外じゃなくて内から自然に出るもんだろう。そちらギリシャ神話だったらプロメーテウスが人間に火を渡す偉業など美と呼ばれるのではないのか?」

二人は面食らったのか大きく目を見開き私を見てきた。30秒ほど私を見つめて深呼吸をした。それがあんまりにもそっくりだったから思わず笑みを浮かべそうになった。

おう。俺、何でお前がここに来れたかわかる気がする。」

「私も何となく分かりました。」

「なぜだ?」

「だって貴女は」

「「完全なる味方でも敵でもない。」」

「だから選ばれたんだ。」

「誰にだ。」

「本によって選ばれたんです、こうちゃん。」

「知に恵まれ誠なる美を知っていて、何より神に気圧されない強かな気を持っている。」

「触れた本にはΓνωστική δύναμη ομορφιάς Σε όσους έχουν τα πάνταと書かれていたでしょう。日本語で訳すと 知、美、力、全て持っている人へ送る 言う意味なのです。本はずっと持ち主を探していたけれど見つかりませんでした。三美神やアプロディーテすら選ばなかった本が貴方には驚くほど似合っています。本のために貴女が作られたと言うより貴女のために本が作られたと言われた方がしっくりくるぐらい。」

「凄く価値あるものだ。きっと先の力になるぞ。俺は神としてこうの力になる。」

アポが背表紙を撫でると金の文字が柔らかい黄色に光り出した。

「私も力にならせて貰います。」

アルが撫でると紫がかった灰色に光った。

「どうなっているんだ⁉️」

「祝福だよ。」

「この先の未来、私達が貴方を守り力を与え、時には共に知恵を出す‥‥‥。」

「お前はこの本によってこちらの冥府、天界、海界の間に来たんだ。この本はお前が新しく転生してもずっと側にいる。」

私のキャパシティは限界だったみたく、その後すぐ、私は倒れてしまった。

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