第10話 水晶玉。
そっと白いもふもふを床に下ろして、そのまま魔力測定の水晶に進む。
白いもふもふは私の周囲を「ぴゃーぴゃー」と鳴きながら、くるくる走り回っている。
見た目は猫っぽいけど、動きは犬っぽくて可愛い。
「おねがい、しましゅ」
あ、また噛んだ。
気を取り直して、踏み台を上がり、大人の頭ほどある水晶玉に触れた。温かい。
……水晶玉の中心から白よりは鈍い銀のような光が徐々に広がって強くなっていく。
『さすが師団長の御息女』
『大聖女様の血を強くひいておいでだ』
『光属性持ちとはっ』
んー、なんか外野は言いたい放題だね。
確か強い魔力保持者の場合は、色で得意な属性も分かったりするらしいんだけど、今のところ色は変わらない。
ただ、徐々に光が強くなり続けている。
どこまで明るくなっていくのかな?と、父様と母様を見上げると…こっちを見てない。
どうやら私の手元の水晶玉を凝視中のようだ。
相変わらずソフィア妃は蕩けそうな笑顔でにこにこ。
レオンハルト王子は、なんかすごい顔してる。
……王子ってさ、ポーカーフェイスのつもりで色々感情こらえてるんだろうけど、ほとんど隠せてないからね?
むしろ変顔の百面相みたいになってて、素敵王子様の顔が残念な事になってるからね?
周囲の反応に少し不安になりつつ、後ろにいるセグシュ兄様を見ると、眩しそうに目を細くしていて……ん…?
いや、いくらなんでも眩しすぎるでしょ?
──自分の手に視線を戻すと、水晶玉が沈み込むように溶け始めていた。
びっくりして、水晶玉から手を離したんだけど……。
これは、あかんやつーっ!!
私は関西人じゃないけど、びっくりして関西弁が出ちゃうよ?ってくらい焦った。
『おい、なんだあれ…水晶玉が溶けてないか?』
『あんなでかいもんが溶けるわけないだろ!』
水晶って石の仲間だよね?
それを削り出してるんだから、氷のように溶けるとか、おかしい、よね?
(べ、弁償かしら……)
ひやりと背中に冷たいものが走っていった。
とりあえず謝ろう!
「ごめ…なしゃ「ぴゃー!」」
急接近してくる「ぴゃー」という白いもふもふ物体の声と、脇腹への強い衝撃と。
会場の天井に設置されている、豪華なシャンデリアが見えた後、視界は暗転する。
ここで、魔力測定会での私の意識は途絶えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます