第5話 映画館のポップコーン(後編)


 がん泣きしてしまいました。


 もう、ボロボロ、ボロボロ泣いてしまいました。


 最後のほうの、あのペチペチやってる、シーンで。


 途中までは余裕だったのに。


 というか、なんか動きやらリアクションがちょっと大げさな感じがして、あんまり気持ちが映画に入っていかないなー、とか思っていたのに。


 余裕ぶっていたのに、がん泣きしてしまいました。


 しかもK太くんは、全然泣いていないので、二倍恥ずかしいです。


 気持ちを落ち着けるためにも、とりあえず映画館の売店に行きます。


 お目当てのポップコーンです。


 ポップコーンの味は、塩とキャラメルとバター醤油がありました。


 私は、ここは、キャラメル一択です。


 昔の私はポップコーンといえばバター醤油でした。


 私が初めて食べたポップコーンは、スーパーのお菓子コーナーにあった、バター醤油味のポップコーンでした。


 そこで買って初めて食べたポップコーンがすごく美味しかったので、私にとってのポップコーンといえば、バター醤油味になってしまったのでした。


 だから、ポップコーンは甘いものというよりは、しょっぱくて美味しいお菓子でした。


 友だちと映画に行った時にも、ポップコーンはバター醤油味が一番美味しい、と声を大にして言っていました。


 その時には、キャラメル味のポップコーンを食べたことがなかったのに、そんなことを偉そうに言ってしまっていたのです。


 ウザがられた私は、友だちからキャラメル味のポップコーンを、口にねじこまれました。


 恥ずかしながら、私のポップコーンランキングの順位はすぐに変わってしまいました。


 さて、K太くんは、どの味がいいのでしょうか。


 私がK太くんに、何味が食べたいか尋ねると、私と一緒でいい、と言われました。


 そこで私はSサイズを二つではなく、Mサイズのキャラメルポップコーンを買うことにしました。


 映画館の売店には座って食べられる場所はなかったです。


 ここの映画館は二階にあって、私たちはエスカレーターで降りて、一階のフードコートでポップコーンを食べることにしました。


 K太くんと映画の話をしながら、ポップコーンを食べます。


 K太くんはキャラメル味のポップコーンをすごく気に入ってくれました。


 何でも、ポップコーンを食べるのが初めてだそうです。


 これは嫌な予感がしますねえ。


 塩とバター醤油も美味しいからね、と私は念入りに言っておきました。

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