シモーヌ編 良き隣人としての記憶
『いくら<同じ人格>と<同じ性格>と<同じ記憶>を持っているとはいえ、必ずしも同じ判断をするとは限らない』
これは事実だと思う。人間は、同じ選択を突き付けられてもその時の状況によって別の判断をする場合があるだろう?
『同じ雄を複数の雌が共有することもある』
というここの感覚を受け入れてくれたのは、
もちろん、頑として拒むこともできないわけじゃなかった。けれど
『郷に入っては郷に従え』
って部分もあることを承諾してくれたというのもあるんだろう。が、
元々は生真面目な人間だしな。
生真面目だからこそ、『ここの<常識>には従った方がいいのかもしれない』とも思ってくれたってのもそうだろうし。
そうだ。同じ<生真面目>でも、どこに基準を置くかで判断が変わることもあるはずなんだ。
となれば、新しく<
『ビアンカが今の
かもしれないわけで。つまり、
なにより、
『
なんだよ。それは確かにある。
だからこそ、今度の<
と言うか、今のシモーヌだって俺とパートナーになるまでには二十年ばかりの期間を要したわけで。そういうものだと思う。
そして俺も、今のシモーヌだから愛せている。いくら彼女と同じ姿や人格や性格や記憶を持っているからといって、俺にとっての<良き隣人>として暮らした記憶までは持ってるわけじゃない。良き隣人として過ごした時間があるわけじゃない<新しい秋嶋シモーヌのコピー>を愛せるわけじゃないんだよ。大前提が違うんだ。
だからといって蔑ろにするつもりもない。たとえ<コピー>であっても、今度のシモーヌもやっぱり<人間>だ。人間として敬うし労うさ。
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