玲編 支え合う仕組み

しかし、いかに、


<ドーベルマンMPMの下位互換>


とはいえ、生身の地球人以上の働きができるなら、本来はそれで十分なはずだった。むしろ、エレクシアやメイフェアやイレーネといった超高性能なロボットの存在が当たり前だったことで、そっちに引っ張られ過ぎていたことを思い知らされる。


「言われてみれば、人間と同じ程度のことができれば人手としては成立するからね」


久利生くりうもしみじみそう言う。


「いやはや、<常識>とか<当たり前>ってのは何気に<罠>だよな。物事を客観的に考える時には」


俺も頷きながら言うと、シモーヌが、


「耳が痛いね」


と苦笑い。


なおこの時、ビアンカは黎明れいあと一緒に昼寝中で、あかりはケインと遊んでいて、ひかりはやっぱりめいれいえいに絵本を読み聞かせていた。萌花ほのかじゅんに任せて。じゅん萌花ほのかにメロメロだしな。


なんてこともありつつ、ホビットMk-Ⅱは淡々と開墾作業を続ける。木を伐採し、根を掘り起こして撤去、地面を均していく。その姿が何となく、


<そういう種族>


にも見えてくるな。


そして伐採した木はそのまま家を建築するための材料にする。実際に新たに集落を建設する際には、伐採した木を乾燥させ建材に適したものにしていく手順は踏めないだろうからな。伐採した木を乾燥させる手順については、アリゼドラゼ村とアカトキツユ村で実際に乾燥させるために保存し、現在検証中だ。


ちなみに、生木をそのまま使ったことで、時間の経過と共に<反り>や<腐れ>が生じ始めたりして、最初の頃に作った住宅では不具合が出始めている。利用しているのがロボットだったり、パパニアンのあらたやレトだったりすることでそこまで気にしないからいいものの、<普通の人間>が住むとすればいろいろ問題もありそうだ。この辺りもデータを蓄積して解消していかないとな。


で、そのために、製材機もコーネリアス号で制作する。簡易型のトレーラーに製材用の電動のこぎりが設置されたような、移動式の簡易製材機だ。完成すればアリアンで近くまで運び、そこからドーベルマンMPMで牽引して運び込む予定だ。アリアンを村の上空までそのまま送り込むと、鈴良れいらやマッハやあらたやレトが怯えてしまうかもしれないからな。


製材機を使うための工房も、すでに完成している。さらに、<透明な滑走路>が完成すれば、長尺物輸送用のワイバーン三型を使って、それぞれ必要な場所に輸送もできる。


ビクキアテグ村は特に、材木にできるような木が周囲に少ないし。


こうやってそれぞれの集落で支え合う仕組みを作っていくわけだ。


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