ホビットMk-Ⅰ編 フローティングヘリ

こうしてアリアン2CVドゥセボーはメインフレームだけの姿となり、解体された他の部分は、一部の筋繊維アクチュエータや一部のフレームがまだ使える状態だったのでそれについては保管することになった。今後もアリアン2CVドゥセボーと同じようにして発見されるメイトギアもあるかもしれないし、こうやって使える部品を残しておけば役に立つ場合もあるかもしれない。


しかし、もうどうにもならない部分については再資源化に回す。


そしていよいよ、アリアン2CVドゥセボーとフローティングヘリとの接続に移った。作業自体はドーベルマンMPMがいれば何も問題はないので、俺達はただ画面越しに見守るだけだ。


フローティングヘリのコクピットにアリアン2CVドゥセボーのメインフレームを搬入。そして指示通りにケーブルを用意して有線で接続していく。


メイトギアのままなら通信機能を介してリンクもできるものの、今のアリアン2CVドゥセボーにその機能はない。加えて、リンクができるのはあくまでフローティングヘリ側のAIも稼働していればの話。現状ではどのみち無理だ。で、有線で直結してアリアン2CVドゥセボー側をプライマリ(第一)、フローティングヘリ本来のAIをセカンダリ(第二)として改めて設定。


「では、起動します」


タブレットに繋がれたアリアン2CVドゥセボーが告げて、起動を開始する。イメージとしては、


『コンフリクトを起こして起動できなくなったらしいフローティングヘリのAIのケツを蹴り上げて叩き起こす』


って感じなのだとか。


すると、あれだけ何をやっても起動しなかったフローティングヘリが、たった十数秒であっさり起動した。ここまでの間、メンテナンスもしっかり行ってたからかもしれないが。


「起動しました。これにていつでも運用可能です」


今度は、フローティングヘリの操縦席のモニターに現れたアリアン2CVドゥセボーのアバターがそう告げた。


けれど、これでようやく、俺がずっと決断を先延ばしにしてきたフローティングヘリが役に立つ日が来たんだ。なんかもう、ちょっと感動だよ。


で、アリアン2CVドゥセボーのメインフレームを副操縦士用の座席にハーネスで固定。ケーブル類は取り敢えず床に養生テープで固定して外れないようにする。


その上でさっそく、試験飛行に移る。


と言っても、フローティングヘリ用のハッチは蔓植物に覆われていてそのまま開けるのは避けてドーベルマンMPMらの手で除去。その様子をそうかいりん達が不思議そうに見ていた。


そして作業も終わり、ゆっくりとコーネリアス号後部のハッチが開いて、フローティングヘリがリフトアップ。


「離陸します」


アリアン2CVドゥセボーが告げて、「ウォーン」という独特の音をさせつつ、遂にフローティングヘリ、いや、<アリアン>は空へと飛び立ったのだった。


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