新編 私の娘みたいなもの
そもそも俺は、<優れた統治者>なんかじゃない。ただ単に、エレクシアやセシリアやメイフェアやイレーネや
<唯一の地球人>
として認識されててそれが<絶対的な力>になってるってだけだ。俺自身の資質が優れてるとかじゃないんだよ。なのにそれを笠に着て君臨しようとしたら、それこそ馬鹿みたいじゃないか。
<虎の威を借る狐>
以外の何だって言うんだ?
だとすればなおのこと、凡人としてわきまえてないといけないよな。
家族からの信頼さえ得られないで、凡人がまともに家族をまとめていけるわけないだろ。
「ありがとうな、
「ううん。これは私の役目だから。
そう言ってくれる彼女が本当に頼もしい。
そんな
ところで、
野生に生きるパパニアンには地球人のような安全は確保されていないし、そもそも樹上で暮らしている以上はいつだってあの程度の挙動は普通だからな。
もう少し腹が大きくなってきたりしたら、気を付けなきゃいけないにしても。
で、ちょうどこの頃、ビアンカの<月経>が始まるという驚天動地の事態が。
昨日、ビアンカが改まった様子で、
「<月経>が、始まりました……」
朝食の場で彼女がいきなりそう告げたんだ。でも、まさかの申告に、
「え…?」
「は…?」
「なに…?」
「へ…?」
「え、え……?」
「月経…って、アラニーズとしてはあなたはもう……」
シモーヌが<専門家>としてそう口にする。なにしろビアンカは、アラニーズとしてはとっくに<繁殖可能な状態>になっていたんだからな。しかし、
「だから、そっちじゃなくて、人間としての……」
そこまで言われて、ようやく全員が察して、
「ええ~~~っ!?」
声を揃えて。
「なに? どうしたの?」
俺とシモーヌが声を上げたのが、元<ビアンカの家>だった新居にまで届いたらしくて、
「いや、ビアンカに月経が始まったって」
俺が告げると、
「月経…? 彼女はもう……」
と言ったところでピンと来たのか、
「まさか、人間としてのそれ?」
訊き直してきたのだった。
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