ビアンカ編 悪癖

<惑星リヴィアターネ>を襲った悲劇については、俺もあまり詳細な情報があるわけじゃないから正確なところは語れないが、


<感染率百パーセント>


<致死率百パーセント>


なんていう感染症が発生したんじゃ、


『そりゃ、完全に封鎖するしか手の打ちようがないよな』


とは俺も思う。後の研究で、


『約百万人に一人程度の確率で、感染しても発症しない可能性がある』


と判明するものの、それすら<可能性>の問題でしかなく、実際に発症しないかどうかは確かめようもないそうだ。何しろ、


『百万人に一人という<不顕性感染>を確認するために実際に感染させる』


なんてことができるはずもないしな。


しかも、『感染しても発症しない』だけで、感染力そのものは失われないそうだ。そして、今なお、ワクチンの開発も治療薬の開発も成功していない。


加えて、世間に流出した<感染者を解剖してる映像>とされるものの中では、惑星リヴィアターネに派遣されたメイトギアが死亡した感染者の頭骨を切開し中身を確認すると、そこには<脳>はなく、<カビのコロニーのような白い塊>があるだけだったそうだ。


この映像そのものの真偽も明らかにはなっていないとはいえ、実際の症状が、


『ウイルスに近い形態ながらカビのような性質も併せ持つ、厳密にはウイルスでも細菌でもないまったく新しい病原体であるそれが人間の神経細胞や脳細胞を分解しエネルギーに変えて増殖、神経細胞や脳と置き換わってしまう』


などという恐ろしいものであることだけははっきりしてるそうだから、それらのことが判明するほどに、


『総合政府の判断はやむを得ないものだった』


という論調に変わっていき、やがて沈静化したそうだ。


それでも、<陰謀論>好きな者達の中には、総合政府が出す情報を、


『捏造だ!』


と断じ、その上で、


『総合政府は、自分達に都合の悪い者達をリヴィアターネに送り込んで一網打尽にするためにこの茶番を仕組んだ!』


などと主張しいまだに抗議活動を続けている者もいるとのこと。


実際、なにやら一部の人間の間では有名な<反総合政府主義者の活動家>とやらも入植していたらしいんだよ。それもあって、<陰謀説>が力を持ってしまったと。


ただ、その<反総合政府主義者の活動家>の親族は、


「彼はただ、リヴィアターネの自然を、乱開発から守るために赴いただけです」


と話し、『別に、総合政府に誘導されて入植したわけじゃない』と証言してるそうだけどな。


が、人間(地球人)というのは、


『<自分に都合の悪い情報>は信じない』


という悪癖があるからなあ。


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