ビアンカ編 ごく当たり前の行為

で、未来みらいがハートマンに挑んでいる間に、ビアンカは、シャワーを浴びて、普段着に着替え、今度は、久利生くりうあかりと共に、村の中に作った<畑>の手入れを行う。


そして畑の手入れを行いながらも、未来みらいからは目を離さない。


子供ってやつは、何か気になるものがあると、周りに全く目がいかなくなり、意識もそれにだけ集中してしまって、危険な真似をしてしまうことがある。牙斬がざんに挑んだのがまさにそれだな。


そういうのを含めて見守るためのロボットではあるものの、だからといって、なにもかもロボットに丸投げすればいいというわけじゃない。やはり基本的には、人間の子供は、親が見守るというのは大事なことだと思う。


<親に見守ってもらえているという実感>


が、重要なんだ。


『自分をこの世に送り出した張本人が見守ってくれている』


という実感がな。


それが子供の自己肯定感の一部になる。


だから、ビアンカや久利生くりうは当然のこととして、あかりも、作業をしながらも未来みらいに意識は向けてくれている。


人間はどうしてもロボットのように一瞬も気をそらすことなく注意を払い続けるということができないからな。それは優秀な軍人であるビアンカや久利生くりうであっても変わらない。


あかりもそれを知っているから、仲間として見守ってくれているんだ。


いやはやありがたいことだよ。




一方、当の未来みらいはというと、ハートマン相手に全力を振り絞り、しかしやっぱり歯が立たず、


「ぷふーっ! ぷふーっ!」


荒い息をしながら地面に座り込んでしまったのが、ハートマンのカメラに捉えられていた。


そんな様子を、ビアンカ達も微笑ましそうな目で見ている。


しばらく地面に座り込んで呼吸を整えていた未来みらいが、少し落ち着いてくると立ち上がり、川へと走ってそのまま飛び込んだ。


体を冷やすためというよりは水を飲むためだろう。


こうやって自然に流れている川の水をそのまま飲むというのは、人間(地球人)にとってはほとんど自殺行為に近い蛮行だが、クロコディアの血を引く未来みらいにとっては、ごく当たり前の行為である。


免疫力の高さが、まるっきり桁違いなんだ。これは、ひかりあかりひなたでさえ変わらない。野生で生きる以上は、必要とされる能力だからな。


ただこの辺りも、人間として世代を重ねれば、失われていく可能性は低くない。そういう部分のフォローも必要になっていくと思われる。


それについても、ロボットがいてくれると非常に助かるよ。人間のように失念したり、思い込みで無謀なことをしないからな。


『免疫力をつけるために、川の水をそのまま飲め!』


とか、実効性とかをまるっきり考慮せず、ただの個人的な主観を押し付けるようなこともしないしな。


人間(地球人)社会でも、時々いるんだよ。カルト集団的なのが、独自の健康法みたいなことを実践して、何人もの犠牲者が出る。ということが。


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