ビアンカ編 優秀なパートナー

新暦〇〇三四年二月十七日




ビアンカは、<久利生くりうのパートナー>としてとても優秀だと思う。


まあ、元々が久利生くりうの部下で、任務によっては副官役を務めたりもしてきたそうだから、お互いをよく理解してるというのもあるんだろう。何度も一緒に死線も越えたらしいし。


だから二人が結ばれるのは、元々、当然の成り行きだったはずなんだ。


そんな二人を、俺はとにかく見守りたいと思う。


と同時に、ルコアとの関係も慎重に見守らないといけない。ルコアにとっては母親みたいなものであり、少なからずビアンカに依存していることは分かっている。


そして、子供から母親を取り上げる行為は、人格形成に大きな影響を与えることは分かっている。


それを分かっているのにわざわざリスクの高いことをするのは、決して、賢明とは言えないだろう。


だから、ビアンカも久利生くりうも、そこを疎かにすることはない。


一方で、<大人>だからといって何もかもを我慢して耐えられるというものでもないのも事実なんだ。俺だって、散々、偉そうなことを言ってきたもののその実態は、ダメダメのボロボロだからな。家族や仲間のために自分にできることを頑張らないとと思ってるだけだ。


となれば、ビアンカと久利生くりうも労わないといけない。


「大丈夫。ルコアのことは私とモニカに任せておいてよ」


あかりがそう言ってくれるから。二人だけの時間も確保できる。


「よろしくね、ルコア」


ルコアが正式にビクキアテグ村の一員となった日、あかりはそう言って笑った。だが、ルコアの方は、この時点ではまだ距離があったのは事実だ。何度も顔を合わせて多少は慣れたとはいえ、そう簡単に心まで許せるほど人間の心理というものは単純でもない。


この点、非常にバリエーション豊かな<家族>や<仲間>の中で育ち、エレクシアやセシリアといったメイトギアから、他者との関わり方について丁寧にレクチャーを受けてきたあかりは、むしろビアンカとは別方向で最適な人材だったかもしれないな。ルコアが抱える<特殊な事情>についても、彼女にとっては、


『当たり前のこと』


でしかなかったんだ。


『自分と違ってる』


『自分の思い通りにはならない』


こと自体が、あかりにとっては<普通のこと>なんだよ。


自分の都合を押し付けず、それでいて決して卑屈でもない。あるがままをただあるがままに受け止める。気負うことなく身構えることなくそれができるあかりに、ルコアも次第に心を許していってくれた。


だが同時に、<異性>である久利生くりうに対しては、ビアンカやあかりへのそれとは明らかに違う<壁>があった。


もっとも、


<魂のイケメン>


である久利生くりうはそんなことを気にするでもなく、敢えて一歩引いた対応を心掛けてくれてた。


そんな彼をビアンカが信頼していて、それが普段の態度に出てたことで、ルコアも安心できていたようだ。


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