モニカとハートマン編 複雑な気持ち

河では最強の捕食者プレデターの一角であるクロコディアも、体が衰えれば<最強の座>から引きずり降ろされ、捕食される側となる。


それは自然の理だ。どうすることもできない。


ゆえに、弱ったまま生き延びるということができない。正直、今のきたるでは、以前のように河にいれば早々に命を落としていた可能性も高い。こうしてビクキアテグ村にいるからこそ、生き延びられているというのはあるだろうな。


かつてのひそかのように認知症を発症するまで生き延びるというも、逆に残酷かもしれない。人間(地球人)の場合はどうしてもその辺りを割り切れなくて見捨てることができない方がむしろ普通なんだろうが、ここではそういう感覚はまだまだ通用しないからな。俺達は良くても、他の捕食者プレデター達は容赦してくれないし。


きたる……」


服を着たがらないし水に入ることも多いことで常にすっぽんぽんの未来みらいを抱いて、久利生くりうが寂し気な表情できたるを見ていた。彼にとっては<初めての我が子を産んでくれた女性>でもあるからな。そういう意味では情も深いと思う。俺だって、ひそかじんふくようのことは今でも特別に想ってる。


それと同じことが久利生くりうにあっても、何も不思議には感じない。


同時に、


「少佐……」


愛する久利生くりうが自分以外の女性に想いを馳せていることにビアンカ自身は複雑な気持ちを抱いてるだろうが、その一方で、


きたるを思い遣れない少佐は少佐じゃありません」


とも公言している彼女は、ちゃんと彼のことを理解しようとしてくれてるよ。さりとて、人間(地球人)としてのメンタリティも多く残している以上は、矛盾した感情を抱いてしまうのも不思議じゃない。


この辺りはなあ。ここでは当然の形態である<ハーレム>を形成する上ではどうしてもあることだろうな。実際、それが当たり前のはずのほまれそうかいの群れにおいても、雌同士のジェラシーで衝突が起こることだって実はあるからな。


特に、ほまれの<第二夫人>だったしずかは、第一夫人であるあおに対して食って掛かることもあったりしたしな。


だからまあ、ビアンカの気持ちも否定されるべきことじゃないと思う。


その一方で、今のきたる未来みらいを育てることに集中していて、久利生くりうのことは見向きもしないし、さらには、立場上、<久利生くりうの第三夫人>であるあかりは、ビアンカを優先しようとしてくれている。彼女が満たされないうちは久利生くりうにアプローチしないつもりなんだ。


で、結果として、現状ではビアンカが久利生くりうを独り占めしている形ではある。


まあそれがあるからこそ、ビアンカも自分を抑えることができてるというのもあるだろう。


この辺りを蔑ろにしていると、<ハーレム>なんてものは簡単に崩壊するだろうな。


で、今はさらにルコアも絡んできてるから、いろいろと気遣う相手が多くて大変だ。


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