モニカとハートマン編 我儘を言わない子供

とは言え、今の人間(地球人)の社会では、職場にもほぼメイトギアがいて、人間の上司のように威圧的でもなければ嫌味も言わずに話を聞いてくれるので、言いにくい内容でもメイトギアを通じて報告するということはよく行われてたりする。


俺は、当時もうすでにメイトギアがあまり好きじゃなかったから自分から積極的に関わろうとはしなかったが、同期の連中はミスの報告や仕事の愚痴なんかをよく聞いてもらってたよ。


で、ミスなんかについては、その内容を精査して、具体的な対処法を添えて上司に報告。その後、ミスした当人に上司からの指示を伝えてくれるという。しかも、具体的な分かりやすい指示ができない上司だったりした時には、要点をまとめて伝えてくれるから、ホント、メイトギアがいなかったら仕事がスムーズにいかないだろうなというのは俺も感じてた。だから、好きじゃなかったが露骨に毛嫌いはしてなかったと思う。


あくまで『思う』だが。態度の端々には不信感が滲み出ていた可能性はある。


まあそれはさておき、ルコアにとってはモニカがそういう役目をしてくれてるだろうな。


日常的な細かい要望の類は、ビアンカとモニカが聞いてくれてる。ルコア自身は、あまり<我儘>を言わないタイプではあるものの、


<我儘を言わない子供>


ってのは、実は決して好ましい状態ではないというのも分かってるそうだ。


子供は、我儘を大人にぶつけることで、自分の要望が通る時と通らない時があるということを学ぶという。しかし、『我儘を言わない』というのは、最初から、


『自分の言葉に大人は耳を傾けてくれない』


と考えてしまっていて、それはすなわち、大人への<不信感>そのものとも言えるらしい。


もちろん、我儘ばかりの子供というのも面倒ではあるものの、しかし、


『そうやって自分の要望を口にしてくれるだけ分かりやすい』


とも考えられるだろうな。俺も、どちらかと言えば、


<自分を抑え付けて何も言わない子供>


よりは、


<自分の気持ちを素直に口にする子供>


の方がむしろ扱いやすいと実感してる。


それはまさに、ひかりあかりだ。


ひかりはものすごく<いい子>なんだが、彼女が何を望んでいるかは、その表情や仕草から俺が察する必要があったのも事実。


一方、あかりは、自分の気持ちや考えてることをかなりそのまま口にするから、分かりやすかったんだ。


ひかりのそれは、幸い、俺への不信感というよりは単純に彼女の性格からくるものだったらしいけどな。


そういう部分についても、普段から子供と一番身近に接している親が本来は気付くものなんだろう。


『我が子が我儘を言わないのは、言う必要がないからか、そういうのを口にしたがらない性格なのか、それとも、『どうせ言っても無駄』と親に対して不信感を抱いているのか』


っていうのをな。


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