モニカとハートマン編 提案

笑顔でビアンカを見送ったルコアだったものの、その姿が完全に見えなくなってしまうと、やっぱり悲しそうな表情になった。頭ではビアンカのことも思い遣れてても、まだまだ完全には割り切れてない部分もあるんだろう。


するとそんなルコアに、


「ルコア様。今日は何して遊びますか?」


モニカがほんのわずかに首を傾げつつ尋ねる。


その仕草がまた、人間の子供っぽくて愛らしい。メイトギアのように人間そっくりの貌じゃなく、あかりまどか達の面差しも取り入れつつ一見して<ロボット>と分かる造形なのに、確かに愛らしいんだ。


それがルコアにとっても心地好いらしく、モニカのことも好きになってくれてる。ビアンカの次くらいには。


まあそうなると当然、ハートマンはさらにその次ということなんだが、ロボットである彼はそんなことは気にしないでいてくれるから助かるよ。


で、『何して遊びますか?』と訊かれたルコアは、少し、思案した後、


「……あんに、挨拶しに行けるかな……?」


と尋ね返した。


「え……?」


タブレットで彼女の様子を見守ってた俺は思わず声を上げてしまう。


これまでルコアは、基本的に、外に出ようとはしなかった。多分、今の自分を受け止めるのにいっぱいいっぱいで、そこまで余裕がなかったんだろう。それが今、自分を見付けてくれたあんに挨拶に行くと言う。


もしかすると、ルコア自身、ビアンカに甘えてばかりじゃ駄目だと思ってくれてるのかもしれない。


無理をさせるつもりはないが、かといって、本人がやりたいと自ら口に出したことを無下にするつもりもない。


連是れんぜ様、いかがいたしましょうか?」


ルコアの方には聞こえないように、俺にだけタブレットを通じて確認を取ってくるという、ロボットならではの芸当で指示を仰いできたモニカに、俺も、


「ああ、ルコアの望み通りにしてやってくれ。もちろん、安全については最優先だが」


と告げた。


「了解いたしました」


そう応えたモニカは、


「じゃあ、あんに挨拶に行きましょう。ただし、ハートマンも一緒です」


ルコアに告げる。


「あ、うん。分かった」


素直に応じてくれたルコアに俺はホッとしながら、


「と言うことで、ハートマンも頼む」


と指示を出す。


「了解いたしました」


こちらも以前よりも確実に人間ぽくなった感じで応えてくれる。


こうして、ルコアとモニカとハートマンは、コーネリアス号の外へと出てきた。


万全を期すため、ハートマンはドーベルマンMPMを周囲に配し、警戒に当たらせる。


でもまあ、別に危険らしい危険はないんだけどな。


念のためということで。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る