麗編 ライフラインそのもの
で、初日だけで予定の三分の一の開墾を終え、発電用のソーラーパネルと蓄電用の大容量バッテリーの設置も済ませ、
「じゃあ、後は頼む」
あんずとますらおにそう声を掛けて、日が暮れる前に俺とエレクシアは帰路に就く。
ここからは、あんずとますらおにお任せだ。
「承知いたしました」
「お任せください」
二体は、明るい感じでそう応えてくれる。人間には朗らかな感じが最も心地好いというのが改めて確認できたからな。
もちろん、受け取り方は人それぞれではあるものの、少なくとも現状では今のあんずとますらおのそれを不快に感じる者もいない。これをベースに、相手によって微調整していくことになるだろう。
それが容易にできるのも、ロボットの強みか。
人間の<演技>は、ちょっとしたことでボロが出るからな。
その点、ロボットの振る舞いは<演技>じゃない。いくつかのパターンを持っていたとしても、それぞれが等しく<素>だ。どれが<表の顔>でどれが<裏の顔>ってわけでもないんだ。
もっとも、だからこそ昔の俺のように、
『すべてが嘘くさい。<本当>がない』
みたいに思ってしまう人間もいたりするわけだが、そういう<個別の案件>についてはその時その時で対応策を考えるさ。
そもそもあの頃の俺はとんでもない不幸が重なったことで病んでただけであって、かなり特殊な事情が前提になってのことだし、あれを普遍的な事例として考えるのも無理がある。
なので、これでいいと俺も思う。
帰る途中もタブレットで様子を確認するが、二体はさっそく、<自分達のための家>の建設を始めた。最初は<小屋>という形だけどな。
また、今回の開発と併せて、離れた場所への給電については、母艦ドローンをベースにさらに大型化させた<基幹ドローン>を用いた、
<大容量給電網>
の構築を計画している。
普通の無線給電機はどうしても小型のロボット数台に同時に給電できる程度の容量しかないが、今、計画中のものは、コーネリアス号に搭載されたブランゲッタ搭載型ヘリへの給電にも使われるシステムを応用したもので、これまで使っていた無線給電機数十台分の電気を一度に送電できるものだ。
要するに、高い志向性を持たせた強力なマイクロ波を、中継器となる基幹ドローンに照射、そして基幹ドローンから各集落に同じく強力なマイクロ波で送電するという形だな。
各集落においてはそれぞれ自前で電力を確保してもらうのが基本になるものの、正直、ソーラーパネルや水力発電だけでは住人がそれなりに増えてくると心許ないというのも事実。これは、アリゼドラゼ村とアリニドラニ村でのシミュレーションから得られた予測だ。それを補うためのバックアップとして給電網も調えておきたいと考えたんだ。
ちなみに、基幹ドローンには、通信の中継機としての機能を持たせ、それこそ<ライフラインそのもの>として運用する予定だ。
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