麗編 従属

とにかくうららは、まどかひなたとは仲もいいものの、あらたのことは好きなものの、それ以外の<家族>とはそれほど関わろうとはしてなかった。じゅんに連れられて密林に入るのだってまどかひなたがいるからついて行ってるだけだ。じゅんのことが特別好きなわけじゃない。


だが俺は、それでいいと思ってる。攻撃的に対立していがみ合うようなことさえなければ問題じゃないんだ。いくら家族でも仲間でも、何もかも合わせなきゃならないってのは、ただの<従属>だ。


従属を強いてきたことで何が起こったかなんてのは、いまさら説明するまでもないだろう。


そんなものは、所詮、<力関係>に依存したものでしかなく、そのバランスが逆転すれば報復が待ってるだけだ。


そして、<力>というやつは、いつか必ず衰える。


全盛期を過ぎたほまれが今も群れを安定的に維持できているのは、仲間に信頼されているからだ。決して力尽くで従えているからじゃない。


ただし、仲間からの信頼を得るためには、実は<力>もないといけないというのもまた事実だけどな。野生の動物の場合は特に。<力のないボス>は、残念ながら信頼されない。しかし同時に、


『<力>とは何か?』


という話でもある。


腕力や攻撃力は重要な要素でありつつ、それを効率的に効果的に活かす<知恵>や<頭のよさ>がないと、自分より非力な相手に遅れを取ることもある。


そして、それらの裏打ちがあってこその<人柄>だろうな。


ほまれは、<力>と<頭脳>と<人柄>が高いレベルでバランスを取っているから信頼されるボスになれているんだろう。


対して、俺の場合は、<力>はエレクシアをはじめとしたロボット頼みだし、<頭脳>もエレクシアやシモーヌに頼り切りだし、<人柄>だって自分では自慢できるものじゃないと思ってる。


ただただ、皆を大切にしたいと思ってて、決断するべき時には決断するように心掛けてるだけだ。


こういう部分がまた、<野生の動物>と<人間>の違いでもあると思う。<役割分担>が重要で、かつ、それが十全に機能を発揮するにはやはり<信頼>が必要なんだ。


で、そういう面でも、力尽くで従属させてたらそこに<不満>や<鬱憤>が溜まり、<反感>が醸成され、それは力のバランスが崩れた時に一気に表面化する。


<子供に報復される親>


ってのは、結局、それなんだろう。


親として子供の生殺与奪権を握っているのをいいことに従属を求めるから、子供が成長して力をつけると報復される。


要するにそういうことだという実感がある。


あと、


『子供相手に下手したてに出ると付け上がる!』


と言うのもいたが、いや、そもそも、


『<下手したてに出た相手につけ込むという発想>を学ばせたのはどこの誰なんだ?』


って話だと思うが?


『相手を敬い気遣う』という姿勢を学んだ子供は、『<下手したてに出た相手につけ込む』ということ自体をしないと思うんだが、<相手を敬い気遣い姿勢>というものを教えなかったのは誰なんだ?


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