翔編 トリオ

超マンティアン<龍然りゅうぜん>を相手に、アリゼ&ドラゼ&りょうトリオの戦いは続く。


三対一でもまったく引けをとらない龍然りゅうぜんもとんでもないが、りょうも、龍然りゅうぜんの攻撃はドラゼを盾にして躱し、同時に、人間ならおそらく到底躱せないすさまじい蹴りを繰り出して、足の爪で執拗に龍然りゅうぜんの目を狙っていた。


しかも、そのりょうの脚を捕らえようと龍然りゅうぜんがカマを伸ばせば、アリゼとドラゼがそれを阻む。


なんという見事なコンビネーション。


前回は、りょう一人で龍然りゅうぜんを撃退しようとして危うく死に掛けた。りょうもその経験をしっかりと活かしてきたんだ。


自分の力だけで勝てないなら、利用できるものは利用して戦う。


人間の場合、ひょっとしたら<卑怯>と言われるかもしれないそれも、生きるか死ぬかの野生の世界では、卑怯もへったくれもない。負ければ<死>だ。生き延びるためならどんな手も使う。


りょうもそれを実践しているに過ぎない。


また、ウェイトで大きく不利なアリゼが龍然りゅうぜんの強烈な蹴りを受けて何度吹っ飛ばされようとも、りょうはそれに気をとられたりもしない。


薄情とも見えるその態度だが、実際に薄情なだけかもしれないが、ロボットであるアリゼに、多く見積もっても体重七十キロ程度の生身の生物である龍然りゅうぜんの蹴りは致命的なダメージにならない。カバーの一部が割れたり外れたりしてもアリゼの動きはまったく衰えない。そのカバーはあくまで人間などが触れた時に可動部に挟まれて怪我をしないように付けた物であって、機構を衝撃から守るためのものじゃないから、機能には影響がない。事実上、ダメージと言えるようなものじゃない。りょうにもそれが分かってるのかもしれない。


『こいつらはやられたりしない』


というのが。


その一方で、龍然りゅうぜんにダメージを与えられる可能性のある攻撃は、現時点ではりょうの鋭い蹴りと足の爪により目を狙うそれだけだ。自動小銃を撃ちつくしたアリゼとドラゼでは攻撃を当てることもできないし捕まえることさえできない。


りょうとしても、『空を飛ぶ』という自分の能力はこの龍然りゅうぜんに対しては絶対的なアドバンテージにならないことを悟ったんだろうな。だから徹底的にアリゼとドラゼを利用しつつ蹴りのみに集中する。


つまり、このトリオでないと、アリゼとドラゼだけでも負けることはなくても、<勝つ>ということはできないのだ。


まったく。実に抜け目ないよ。さすがだ。


などと、ただの人間でしかない俺にはひたすら感心するしかできない。


でも同時に、<孫>の逞しさがすごく立派に思えて、嬉しくなる。


そうだ。りょう。お前も<父親>になるんだ。その、<生を確実に掴み取ろうとする強さ>を生まれてくる我が子に見せてやれ。


『お前の父親は決して生きることを諦めなかったぞ』


って教えてやるんだ。


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