翔編 内科的な医療

外科的な医療についても大事だが、内科的な医療についても考えなきゃいけない。


ただ、現時点でも抗生物質については確保できてるから、後は乱用して耐性菌を作らないことを心掛ければ何とかなるだろう。そもそも俺とシモーヌを除けば、子供達は元々免疫力がすごく高い。


その一方で、ウイルスについては、抗体を持った生物なども順次発見できてるものの、現時点では正直、<抗細菌・ウイルス剤>や<抗ウイルスナノマシン>に頼り切っている状態ではある。


が、現時点では発見されているウイルスに対しては、子供達も抗体を持ってることは確認済みだし、おかしな新種のウイルスでも出てこない限りは大丈夫だろう。


とは言え、将来、ここに人間社会ができて開発を行っていれば、うっかり抗体を持ってないウイルスを蔓延させることもありえる。実際、地球でもかつてはよくあったことだと聞く。その辺りも気を付けるように伝えていかないとな。


人間としても、過去を教訓として新しい惑星の開発などでは微生物やウイルスについては徹底的に解析するようにしてるらしいが、それでも、何度か触れてきた惑星リヴィアターネでの災禍のように、入植前の調査では発見されなかったウイルスが後から見付かって大変なことになるという事例はあるからな。


もっとも、リヴィアターネの件は、その中でも超例外中の例外だそうだ。普通は数ヶ月で対処できるそうだし。


一応、リヴィアターネに蔓延してるウイルスについても、ある遺伝子が活性化してると、感染はしても発症しないことが分かってるとも聞く。


だったら対策ができると思うかもしれないものの、実はその遺伝子が活性化してると、今度は別のウイルスに対してとんでもない弱点になるらしい。普段は、免疫さえ弱ってなければ放っておいても数日で治るような病気の原因になっているウイルスが致命的になるんだとか。


なので、決定的な対処法にはならないそうだ。しかも、リヴィアターネの方のそれは一度発症してしまうとそれから遺伝子操作をしても間に合わないとも。


まさに、


『こちらを立てればあちらが立たず』


状態だな。


それもあり、少なくとも俺が夢色星団に突入するまでの段階じゃリヴィアターネの封鎖は解かれる予定もなかったという話だ。


幸い、ここじゃそこまでおっかないウイルスも見付かっていない。そんなのがあればここまで多様な生物が繁殖していなかっただろうしな。


件のリヴィアターネじゃ、ウイルスの影響か、犬くらいの大きさまでの動物しかいなかったそうだし。なんでも、ネズミ以上の大きさの脳を持つ動物であれば、種類を問わず百パーセントに近い確率で感染し発症するから、かつてのパンデミックでネズミ以上の大きさの脳を持つ動物が死滅して、やっと沈静化してから生き残った小さな動物が進化してようやく犬くらいの大きさにまでなったと見られてるらしい。


いやはや、おっかない話だよ。


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