翔編 人の営み

とか何とか取り留めのないことを考えつつも作業を進めて、トレーラーいっぱいに伐採した材木を積み込んだ。


今回は、


<建材として確保した材木を保管しておく倉庫>


を作ることになる。


いわゆる<丸太小屋>って形で。


とは言え、今回伐採した材木だけでは足りない。なので、まずは雨除けの簡易な屋根だけを作ってもらう。


俺も手伝うものの、やっぱりほとんどエレクシアに作ってもらうことになる。


すると彼女は、材木で骨組みを作り、ローバーの荷台に積んできた屋根材で屋根を葺き、二時間と掛からずに、一時保管用の雨除けを作ってくれた。ここに材木を保管して、十分な量になったらそれで倉庫を作るわけだ。


「ふう…」


しかし、今日はいつも以上に肉体労働だったから、さすがに疲れたな。


そんな俺とは対照的に、エレクシアはやっぱり涼しげに平然としていた。もちろん汗なんかかいてない。ロボットなんだから当然なんだが、やはり感心させられてしまう。


しかも、


「サンドイッチの残りがあります。食べますか?」


と俺を気遣ってくれる。


「ああ、そうだな。帰るまでの腹しのぎとしていただくよ」


井戸の水で顔と頭を洗って少しさっぱりした状態で、俺は応えた。


なお、井戸水の方は、若干、硬度は高いものの水質には大きな問題はなかった。そのままでも飲めるレベルだが、念のため、簡易浄水器を通した上で煮沸はする。エレクシアがしっかりと用意してくれていた。


いやはやありがたい。


「いつもいつも本当にありがとうな」


俺としても謝意は示させてもらう。


「いえ、これが私の役目ですから」


相変わらず冷淡な態度の彼女に、むしろホッとしてしまうよ。


こうして作業を終えようとしていたその時、空が急に暗くなってきた。


「湿度が高いです。雨になりますね」


エレクシアの言葉通り、どーっと雨が降り始める。


仕方ないので俺とエレクシアはローバーに避難する。井戸掘りマシンの方はちゃんと小屋の中で無事だ。


今日、伐採してきた材木も、屋根だけしかない仮置き場だから多少は濡れたものの、完全には雨曝しにならずに済んだ。いやはや、先に用意して正解だったな。


雨は一時間ほどでやみ、地面は少しぬかるんでいたが、それも日が射し始めると見る見る乾いていった。地面に水溜りが残る様子はない。さすがに水捌けがいいということか。


でもまあ、日も傾いてきたし、今日のところはこれで帰るとしよう。


「今から帰る」


タブレットを通じてシモーヌに伝える。


「はい、気を付けて帰ってきてくださいね♡」


まるで新妻のように、いや、実際に新妻なんだが、彼女はにっこりと微笑んで言ってくれた。


それがまた心地好くて照れくさい。


仕事をして、待ってくれている人のところに帰る。


改めて、


『ああ…これが人の営みなんだなあ……』


とも思ったのだった。


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