誉編 最悪の推測
<防衛ライン>へと向かう道中は、順調そのものだった。運転はエレクシアに任せ、俺は母艦ドローンのカメラに捉えられた
しかし、出発前に見た時よりもさらに大きくなったような印象があるな。
もちろん朝と夕とで明らかに大きさが違ってしまうほどの速度で成長するわけじゃないにせよ、それでも数日あれば印象が変わるくらいには大きくなる。
実に恐ろしい<怪物>だよ。しかも、運転しながらも映像解析を行っていたエレクシアが、
「映像のスペクトル分析の結果、表皮の下に、明らかにただの皮膚とは違う層が見受けられるのが確認されました」
とか言い出した。
「違う層?」
俺が訊き返すと、
「おそらく、鱗状に硬質化した部分だと思われます」
と、淡々と答える。
だが俺は、
「何!?」
と声を上げてしまった。続けて、
「それは、
などと問い掛けてしまうと、
「十中八九その通りと推測します」
とのことだった。
「……もう既に…か? でもなんでだ? ここまでそれほどの強敵に出逢ったわけじゃないだろう? なのにどうしてもうそんな備えをしてる……?」
呟くように疑問を口にした俺に、エレクシアはやはり淡々と述べた。
「マスターが予測された通り、
その言葉に、俺はゾクリと冷たいものが背筋を奔り抜けるのを感じた。
「まさか……俺達が撃破する度にさらに強いのが現れるということか……?」
「その可能性は否定できません……」
馬鹿な……それじゃ今回、
ここに来てのその推測に、俺は言葉を失ってしまった。
じゃあ、どうすればいいんだ…? 撃破せずに追い払うべきってことなのか……?
それとも、そういうのが現れたら安全なところまで逃げるべきってことなのか……?
だが、その<安全な場所>なんてどこにある?
あの不定形生物はこの台地の上にも、そして台地の麓にもいる。どこに逃げたってまた危険な新種の生き物が現れる可能性はなくならないだろう。
倒さなければ俺達が死ぬかもしれない。
しかし、倒せばさらに強力な怪物が現れるかもしれない。
そのジレンマに、俺は、腹の奥から何かが込み上げてくるように気がして「うぷっ!」っとえずいてしまった。
なんだよそれ……
勘弁してくれよ……
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