誉編 碧 その2
先にも言ったとおり、
この
遺伝子的にはほぼ人間なのだが、知能はおそらく幼児並みで、文明を築くほどの能力はなかったようだ。
完全な野生の環境に適応する為に、敢えて人間的な知能を発達させずに、身体的な能力の発露に全振りすることで適応してきたんだろうな。なにしろ普通の人間は、道具も持たずに裸で自然の中に放り出されれば数日生き延びることさえままならないし。
そんな訳で文明を築くことは諦めてって感じだろうか。
なお、パパニアンも、最初から今の姿だった訳じゃないと思われる。なにしろ、不定形生物が落雷等を受けて決まった姿形を取ると言ってもそれは常に決まったものじゃなく、その中に蓄えられた膨大な遺伝子情報がランダムに発現するようなので、人間に非常に近い形態を持った者同士が出逢って子を生していった結果、パパニアンをはじめとした様々な種族へと変化していったんだろう。
だから、同じ経緯で生まれた生き物は他にも多数いる。中にはやはり人間の姿を模したり、体の一部だけが人間そっくりになった生き物もいるんだが、そちらはあくまで<姿>だけで、その思考形態は昆虫や爬虫類のそれで、人間が持つ感性を一切、持ち合わせていない。
いや、それどころか<感性>と呼べるもの自体が存在せず、下手をすると<情>どころか<恐怖>すら感じていないと思しきものすらいる始末だ。
この点で言えばパパニアンは僅かとは言え人間としてのメンタリティも残しているから、俺としてもいくらかは共感することもできる。
だからこそ、
人間である俺の子として生まれ、俺の下で育った
なにしろ、彼の毛繕いをしている時の姿は、白い体毛に覆われている以外は完全に、
<夫の身嗜みを整えている妻>
そのものだったりするからな。
いやはや、驚きだよ。
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