誉編 メイフェアの日常 その7

<弱肉強食>という言葉のあやふやさもここに来て学んだ俺は、自分が大きな力を持ってるからといってなんでも好き勝手にしていい訳じゃないと改めて実感した。


『自然を守る』というのはこういう意味でもあったんだなと思ったりもする。


という訳で、あまり干渉しすぎないようにしつつほまれ達を守ってもらうようにメイフェアには依頼してあるということだ。


彼女は、実によくそれを実行してくれている。


ほまれの群れの子供達が危険なことをしてても、致命傷にならないようには陰ながら対処しつつ、しかし多少は痛い目を見て危険を学んでいくということの邪魔はしない。


このことでも、これまでに二度ばかり、手助けが間に合わずに子供が亡くなってるが、それについてメイフェアには自分を責めないように申し渡している。これはあくまで人間である俺の指示に従ってのことであり、かつ人間社会ほど安全に配慮された作りにはなっていないのだから、彼女には責任はないのだと。


普通のロボットはわざわざそんなことをしなくても<心>を持たないので気にすることもないんだが、感情|(のようなもの)を持たされているメイフェアは、それを気にしてしまうんだ。


本来は道具である筈のロボットを人間が気遣わないといけないという、本末転倒な事態である。


このことからも、ロボットに<心>や<感情>を再現することは見送られてきたんだろうなあと改めて推測される感じだろうか。


さりとて、<道具>ではありつつもメイフェアも俺達の大切な<仲間>なので、彼女が苦しむようなことを見過ごすこともできない。


こうして彼女は今日も、ロボットである特性を最大限に活かしてドローンを自らの目や耳として、複数個所へと斥候に出た若い雄の各小グループを見守りつつ、子供達が遊んでいるのを見守るという、人間には決してできない役目を果たしてくれている。


すると今日も、子供の一人が蛇に手を出して咬まれるという<事件>が起こったが、それも彼女は気付きつつも、毒を持たない蛇だったので、敢えて手は出さずにいたのだった。


これについて、通信によって報告を行い、それを受信したエレクシアを通じて俺は詳細を把握した。


「そうか。怪我は大したことないんだな?」


タブレットを使ってメイフェアとと直接話した俺は、気になった点について尋ねる。


それに対して彼女も、


「はい。恐らく二~三日で回復する程度の怪我だと思われます」


と答えてくれた。


「ならいい。引き続き見守りを頼む」


俺の指示通りに対処してくれてる彼女を、責めることはしない。


彼女は非常に優秀だからな。


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