馴れ初めというには(いささか血生臭いかな)

駿しゅんごうの様子についてもう少し詳しく触れておこうか。




その日、駿しゅんは、仲間と一緒に狩りを行っていた。


狙いはブタと言うかイノシシと言うかって感じの、恐竜に似た生物を祖先に持つ、ここでは割とありふれた動物だった。外見はブタに近い印象があるにも拘らず性格はイノシシっぽい凶暴さも持ち、雑食性で、ボクサー竜ボクサーの卵や幼体も襲う、なかなかに手強い相手だ。


大きさも、大きい個体ともなれば、体高七十センチ強、体重八十キロを超えるものもいて、生身の人間が素手で格闘したらまず勝てない相手である。


群れで襲い掛かるボクサー竜ボクサーなら負けることはないにしても、下手をすると仲間を何頭か失うことだって十分に有り得るので油断はできない。


それを、やや遠巻きに囲い込みつつ機会を窺う。とは言え、相手も既に自分が狙われていることには気付いており、


「フガッ! フガァッ!!」


と鼻息荒く身構えて、駿しゅん達を威嚇する。


そして、最も包囲が薄い場所を見つけ出し、それ目掛けて一直線に走り出した。


体重だけならボクサー竜ボクサー単体を大きく上回っている為、真っ向からぶつかり合うとボクサー竜ボクサーの側が力負けする。それによって一点突破を狙っているんだろう。


しかしそれは駿しゅんの狙い通りだった。実はそこには伏兵を忍ばせていたのだ。


そしてその狙い通りに、獲物は包囲を破ろうと猛烈に突進を始めたというわけだな。


駿しゅんにしてみれば、ニヤリと笑えるものならば笑っていたかもしれない。


だが、獲物の突進を受けて身を躱したボクサー竜ボクサーの背後から現れたのは、仲間だけではなかった。


「ガアァッ!!」


仲間の背後からさらにボクサー竜ボクサーが現れたのだ。


しかもそいつらは伏兵として待機していた駿しゅんの仲間にも襲い掛かり、その上で<獲物>にも襲い掛かった。


他の群れによる<獲物>の横取りだ。


実はその時、駿しゅん達が狩りをしていたのは、別の群れとで互いに縄張りを主張している辺りだった。


だから、向こうの群れにしてみれば、自分達の縄張りに入り込んで荒らされているということだったんだろう。


その時に現れたボクサー竜ボクサーの中に、明らかに他の個体よりも明らかに体が大きく、面構えも凶暴なのがいた。


そいつは目の前にいたボクサー竜ボクサーを飛び蹴りで弾き飛ばし、その反動で軌道を変えてそのまま<獲物>の首へと食らいつく。


飛びついた勢いをそのまま活かしてぶら下がると、さすがに支えきれずに<獲物>がその場に倒れこむ。すると、乱入してきた側のボクサー竜ボクサーの仲間がわらわらと湧いて出て、次々に<獲物>へと食らいついたのだった。


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