残酷な結末(だがそういうものだろう)

突然のすいの乱入を、人間であればついつい思ってしまうだろうな。


駿しゅん達に加勢しようとしたのかもしれない』


と。


俺やシモーヌやひかりあかり駿しゅん達に対して敵対してないどころか、<仲間>と見做すような振る舞いをしていたのを見ていただろうし、ある種の仲間のようなものと認識していた可能性がない訳じゃない、かもしれない。


それがどうかは分からないものの、起こった事象だけを見ればすい駿しゅん達に加勢したようにも見えてしまう。


そして、すいの一撃を受けたアサシン竜アサシンは、バランスを崩し、片目が潰されたこともあってか枝を掴み損ねて地上へと落下した。


圧倒的に有利な位置取りをできていたものが、一瞬にしてボクサー竜ボクサーのステージへと引きずり落とされたのだ。


こうなるともう、<数の暴力>の独壇場である。


駿しゅん達はボスを先頭にして一斉にアサシン竜アサシンを徹底的に蹂躙する為に襲い掛かった。


しかしだからと言ってアサシン竜アサシンもただ黙ってやられたりはしない。長い腕を鞭のように振り回してボクサー竜ボクサーを弾き飛ばし、抵抗する。


「ガァアアァァアーッッ!!」


と咆哮し、生きることを決して諦めたりしない。


その姿はまさに『鬼気迫る』というものだっただろうか。


それでも、再び自分に有利な位置取りをしようと木に掴まろうとするアサシン竜アサシン駿しゅん達も逃しはしなかった。腕に胴に脚に食らいつき、鈴なりになる。


さすがにそれらすべてを持ち上げて木に上ることまではできず、アサシン竜アサシンは再び地面へと落ちた。


「ガアッ! ガアアッッ!! ギャーッッ!!」


なおも諦めずに抵抗するアサシン竜アサシンを、駿しゅん達は、生きたまま肉を食いちぎり、骨を噛み砕いていく。


その残酷な光景に、人間は言葉を失うんだろうな。


「……」


「……」


俺もシモーヌも、言葉がなかった。


そういうものだと分かってはいても、これまでにも似たような光景は何度も見てきても、割り切ってはしまえなかった。


命が潰えていく瞬間を前にして。


じんようが穏やかに眠るように息を引き取っていったのとはまるで違う、まさに<自然の営み>そのものの光景。


「これが、本来の姿か……」


そんなことも呟いてしまう。


じんようがこうならずに済んでよかったとも思ってしまう。


つくづく人間はもう自然には還れないんだなと、改めて実感させられてしまった。


自分の家族がこんな結末を迎えるなんて、想像もしたくない。


それがどんなに身勝手な想いであっても、な。


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