遭遇(はっは~、ベタすぎるぞ)

要するに遭難したってことなんだが、俺がジャンク屋から買った宇宙船の頭脳体としてついてきたメイトギアのエレクシアYM10のおかげで、存外、快適に過ごせてる。


メイトギアは人間の安全と命を守ることも重要な役目として元々プログラミングされてるから、俺のことを徹底的に守ろうとしてくれるんだ。しかもこのエレクシアYM10は要人警護仕様って言って、本来はテロなどから要人を守る為に使われるタイプだから基本性能が一般仕様よりも格段に高く、さらには戦闘力も付与されてるもんで、はっきり言って安心感しかない。


もっとも、前のオーナーが色々カスタマイズしてしかも宇宙船の頭脳体にまでしてしまってたからか、初期状態とは外見からして大きく変わってしまってたけどな。確かオリジナルのウイッグは赤いウルフカットだった筈。それを青いロングのアニメ風のウイッグに変えてる辺り、前のオーナーはいわゆるオタクだったのかも。


メイトギアは基本的にはバッテリーで稼働するが、宇宙船にはアミダ・リアクターが搭載されてて電気の心配はない。メーカーの謳い文句じゃ数万年は電力を供給してくれるらしい。どこまで本当かは俺にも分からないものの、少なくとも有名メーカー製のそれは、最初期に作られたタイプのものでも製造から数百年が経ってても発電し続けてるとは言ってたな。


この宇宙船に搭載されてるのも、型は古いが有名メーカーのそれだった。その上、予備も含めて三機もあるから、生活するだけなら供給過剰なくらいだ。本来は宇宙船の補器を動かす用だからそれで普通だけどな。


生活空間としては宇宙船の中の居住スペースがあれば問題ないし、水はろ過機があるし、宇宙船に装備されてる簡易分析機があれば採取したものが食材に適してるかどうかも分かるし、正直、なにも困らない。話し相手がエレクシアしかいないのはあれでも、ま、このまま死ぬまでのんびり過ごすのもありかなって感じだ。


ただ、少し気になってることもある。ここに不時着した時から時々見かけるんだが、白いふわふわした感じの動物っぽいのがこちらを窺ってるらしくてね。攻撃してくるとかじゃないんだが、あれは何だろうか。


「捕獲しますか?」


俺が気にしてるのを察してエレクシアがそう訊いてきた。でもまあ、危険はなさそうだし、


「いいよ。放っといて」


と応えておいた。そしたら、一ヶ月ほど経ったある日、簡易テントの下で昼寝してた俺の枕元までやってきたんだ。


「…人間……?」


そいつの姿を間近ではっきり見た俺は、思わずそう呟いてた。


そう、その白いふわふわの動物っぽいのは、人間、それも十代くらいの女の子っぽい<何か>だったんだよ。


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