巨艦胎動1 ガダルカナル撤退

霊凰

第1話 転換

 「ミッドウェーで敗れたのは何が原因か?」山本五十六連合艦隊司令長官は旗艦「大和」の艦上で開かれたGF会議の席上で出席者に問いかけた。

 重苦しい沈黙が会議を埋め尽くした。沈黙を破り、「空母機動部隊の守りが極めて貧弱だったのが原因だと考えられます。」と富岡貞俊主席参謀が答えた。

 「私も同様のことを考えていました。」と松本正参参謀副長も富岡に同調した。「対空火器の命中率の低さ、各空母のダメージコントロール能力の低さ、更には艦載機の防御力の低さという意味でも富岡主席参謀の指摘は正しいものだと本官も考えます。」

 「艦載機の防御力の低さ」と言った瞬間険しい顔をした参謀が何人かいたが松本は躊躇わずに言い切った。

 「この問題に対してどうするべきだと考えるかね?」と山本が参謀たちに再び問いかけた。

 「まず、対空火器の命中率の低さという問題に対しては、25ミリ3連装機銃の増設や、只今開発中の20ミリ4連装機銃、長10センチ砲の新設で対応し、各空母のダメージコントロールの低さという問題に対しては、各空母に乗せる緊急ダメージコントロールチームの増加や、改祥鳳型に搭載予定の新型排水ポンプを全空母に搭載させるといった方法で対応し、最後に艦載機の防御力の低さという問題に対しては、現在、中島飛行機で進められている新型艦戦の開発と平行して、防御力を強化した新型零戦や99艦爆の改良型の開発を進めることで対応したいと考えています。」と富岡が言った。

 「それだけでは不足だと本官は考えます。」と宇垣纏参謀長が言った。

 「まだ何かあるのかね?」と山本が宇垣に問いかけた。

 「既存艦の防空巡洋艦化、秋月型や新規の防空巡洋艦の増産を行い、機動部隊全体としての防空能力を向上させ、さらに2式艦偵を正式採用し、索敵能力の向上も行うべきだと本官は考えます。」と宇垣が言った。

 「うーむ」と山本は唸った。

 「ミッドウェー海戦で得た戦訓を活かすことが肝要だと本官は考えます。」と宇垣が会議に出席している全員を見渡しながら言った。

 「今日の会議で出た参謀長をはじめとする各参謀の意見をGFからの要望書として早急にまとめ、軍令部の伊藤次長のところに提出しよう。」と山本が言い、会議を締めくくった。



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