Have you ever seen エビリファイ
軍曹
第1話 Pizza of death
今じゃお話にもならない。精神的にイカれたヤツなんてそこら中にいる。ヘビーなヤツもいれば、「あら、隣のご主人ちょっと変わってるわね。」なんてのもザラだ。
オレはナイフでコミュニケーションを取ろうとする輩でもないし、周りからサイコ野郎って思われる訳じゃないが、精神医療の手帳を持ってる。最低ランクの。
母親はいつでも「やれば出来る子。」みたいな事言ってオレを立派な精神障がい者候補生に仕上げ、父親は子育てには無関心で自分の車を自分のガキが無免許で乗ってる事さえも知らない有様だった。
さてと、なにから話すべきか。
少なくとも20代位までは親友とか彼女もいたし、精神障がい者には無縁で無関心だったと思う。そんなのはイカしたロックスターしかならないと思ってた。マークボランとか。
けど、魂がイカれるのは頭がイカれるより素敵だと思ってたふしがある。
宅配ピザのバイトは最高だ。自分が20歳位の頃はまだバブル期の名残りがあって時給が良かった。
いきなり宅配ピザのバイトの話しかよ?頭イカれるのか?
その通り。
イカれた彼女との出会いも宅配ピザ屋だった。沖縄出身の大家族。付き合って1週間もたたないうちに「お父さんに会って欲しい。」もちろん会ったさ。スキンヘッドのヒゲで家にいるのに作業服のお父さんにね。
「毎日電話しないと許さない」とか「毎日電話してこないで欲しい」とか「憧れてる先輩とお祭り行ってくるね!」とかお父さんが刃物を持って暴れるのを止めたり、原チャリ買うから名義貸せって言われたり。
恥ずかしながら女性と付き合った事が無かったから、これが普通と思ってた。
徹底的に相手のニーズに合わせ、嫌われない様にする。例え自分の考え方や価値観を否定されても。それは恋愛じゃなくて従属か何かだった。
新しい何かが誕生した。決してポジティブなものじゃなく、なんかもう巻き付く黒いモノって言うかそんなものだ。
自分の魂と肉体と将来と価値観を殺す。そんな自分のウブな恋愛が今の絶望のほんの小さな小さなコアを作り出しているような気がする。
ただ、足掛け7年で彼女は去ったが、酒だけは地獄の置き土産で未だに自分と一緒だ。
あ、あとピザ屋も潰れたが異性に関する捻くれた考え方とノーフューチャーは去らなかった。
女と上手く付き合えるヤツって絶対的に接客とか営業に向いてると思う。ニーズのくみ取りが半端ないからだ。
うすうす当時の自分も気がついていた。就職活動の時期は地獄の氷河期だったが、こんなクソ女のニーズに必死に答える能力がある自分は接客に向いてるんじゃないかな?
結果的に自分のコメカミに銃口を当ててるのも気がつかずに、某大手の宅配ピザを運営する会社に入社するハメになった。ハメって言っても自分が志望したんだが…。
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