第220話 ブラッハムの変化
私とリシアは次のトーマスの授業を受けた。
今日も戦術関連の授業だった。
トーマスは、流石バサマークの側近として働いていただけあり、戦術には詳しく、書物などに載っていないような、実戦的な戦術も教えてくれた。
まあ、実際に使うことになるかは微妙なところだが。
一応戦には出ることもあるだろうから、知っておいて損はないはずだ。忘れないようにしないとな。
戦術以外のことも教える日があるようなので、出来ればそっちの方が聞きたいかもしれない。トーマスしか知らない面白い情報なんかもありそうだしな。
授業は特に問題なく進んだが、ブラッハムの様子が気になった。
最初来たときは不真面目でまともに話を聞いていなかったようだが、今日は真面目に話を聞いている。
ちゃんと分からないことはトーマスに質問するし、聞き逃したりせず真剣な様子だった。
真剣すぎてトーマスも戸惑っていた。
今までこんな様子になったことは見たことがなかったのだろう。
悪いことでは全くない。
武勇は良いが知略に難のあるブラッハムなので、真面目に勉強する気になったのは良い傾向と言えるだろう。
しかし、いきなりこんなに変わるとは……
「……ブラッハムに何か言ったのか?」
小声でトーマスが話しかけてきた。
「いや何も……」
「本当か? なんでいきなりあんな真面目になんだよ。わかんねぇ奴だな。坊主がいるからアピールするために張り切り始めたとか?」
それなら私が来たその日から真面目にやってそうなものだが。
何か心境の変化でもあったのだろうか。
「気持ち悪いんだが、悪い傾向ではないな。思っていたより理解力もある」
ブラッハムはきちんと話さえ聞けば、理解力は決して低くはなかった。知略の限界値もそこそこの数値だし、地頭は悪くはないんだろう。
「腕っ節は確かだし、このまま戦というものを理解していけば、一端の武将にはなれるかもな。ま、サマフォース全土でもトップクラスってのは言い過ぎかもしれねぇーがな。ははっ」
最後にそう笑ってトーマスは去っていった。
それから数週間後。
毎日ではないが、何度か授業を受けた。
学生時代に戻った気分で結構楽しかったけど、でも流石にそろそろ鑑定で新しい人材の発掘を再開するべきなので、通うのはもうあと少しだけになるだろう。
ブラッハムは今でも真面目に授業を受け続けていた。
一日だけで終わるかもと考えていたが、ここまで続けば立派なものだろう。
ブラッハムは完全に心を入れ替えたようだ。
私は鑑定スキルで、ブラッハムを鑑定してみた。
ブラッハム・ジョー 17歳♂
・ステータス
統率 68/102
武勇 91/92
知略 45/61
政治 19/55
野心 88
・適性
歩兵 S
騎兵 A
弓兵 B
魔法兵 D
築城 C
兵器 D
水軍 D
空軍 D
計略 D
こんな感じのステータスだった。
知略はだいぶ伸びた。だがそれでも、45はそんなに高くはないが。
統率68は思ったほど伸びていなかった。
ただ、本来統率は実戦で実際に兵を率いることで伸ばすステータスだろうから、勉強しただけはそこまで劇的には伸びないだろう。少し伸びているだけでも十分だ。
68だとまだ大軍を率いるのは怖いが……
まあただ、潜在能力があるのは確かなんだ。
今後実戦があれば、ブラッハムにもっと大勢の兵を率いさせても良いかもしれない。
とりあえず成長しているのは良いことなんだが、気がかりな点もあった。
「はぁ……」
基本いつも無駄に元気なブラッハムだが、真面目になってから何故か落ち込んでいるようだった。
真面目になったことと何か関係あるのだろうか。
まあ、一気に自分を変えたくらいだし、何か色々あったのかもしれない。
今のところ勉強しているのはいい傾向なので、見守っておこう。
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