第206話 面談
「いやー! 僕を採用するとは! カナレ郡長には人を見る目がお有りと噂がありましたが、本当のことみたいでしたね!」
採用後ヴァージと話をしたら、陽気な感じにそう言っていた。
結構、自信を持っているようである。
「それで僕はどんな仕事をすれば良いんでしょうか! 戦の指揮ですか? 戦うのは苦手ですけど、知識は身につけたので意外と指揮はできるかもしれませんよ!」
「いや、指揮は……」
彼は現時点での統率力は低いし、あまり限界値も高くない。
兵を率いらせるのは、得策じゃないだろう。
しかし、ヴァージにはどういう役割を与えるのが、的確だろうか。
口の上手さは、外交だけでなく色々な面で使える能力だ。
例えば、不満を持っている領民を説得したり、商談を纏め易くも出来たりするだろう。
内政をする際にも、様々な場面で活躍できるはずだ。
今、カナレでは、リーツが中心になって内政を行なっている。
私は人材発掘を行ってはいるが、細かい内政の指示などはよく分からないことが多いので、リーツに任せていることが多い。
リーツは軍事的な訓練も行なっているので、正直非常に負担が大きい。最近では、軍事においてはブラッハムやザットが徐々に成長してきたので、彼らに任せていることもあるようだが、それでも仕事量は膨大にある。
ヴァージをリーツの補佐につければ、内政面での手助けになるかもしれない。
もちろんいきなり使えるようにはならないし、最初は勉強する期間は必要だろうけど。
逆にそれでリーツの負担を多くしてしまう可能性もなくはない。
まあ、でも、鑑定スキルを信じるなら、ヴァージは政治をするに当たって、有能な人材なはずだ。
彼はリーツの補佐につけることにしよう。
「君はしばらくの間、リーツの補佐をしてくれ」
「リーツというと……確かマルカ人の方ですよね。噂ではめちゃくちゃ強いとか。その人の下で修行をしてこいと!?」
興奮した様子でそういった。
ヴァージはもしや戦いたいのか?
自分の才能とやりたいことが違うパターンなのだろうか。
「いや、戦うわけではなくてだな……リーツは内政でも色々仕事をしているので、それの補佐をしてほしいのだ」
「戦いではなく内政方面での仕事ですか。どちらかというとそっちの方が出来るかもしれませんね。がんばります。しかし、マルカ人って、どこ行っても奴隷にされたりして、可哀想だなって思ってたんですけど、リーツさんは何でも出来るんですね。凄いです」
ヴァージはマルカ人へ差別意識があるというより、可哀想と思っているタイプのようだ。割と良い人なのかもしれない。
「それでは早速リーツさんの下に行きたいと思います! どこにおられるのでしょうか!」
やる気満々な様子でヴァージは言った。
城の使用人を呼んできて、彼をリーツがいる場所へと案内させた。
向上心もありそうだし、きちんと成長してリーツの手助けをしてくれるだろう。
それからヴァージ以外の人材とも面談し、仕事を振り分けて行った。ヴァージ以外はほとんどが兵士になるような人材だった。
それなりに人材も獲得した。
目も疲れてきたし、明日は休憩するとしよう。
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