第93話 ワクマクロ砦

 サムク郡に侵攻を開始。


 クランは用意していた魔法罠解除兵を総動員する。

 ロセルの予想通り、道中には複数の魔法罠が仕掛けられていた。

 全て解除し、安全を確認してから、進軍する。


 途中で敵の拠点をいくつか落としていく。


 アルファーダ郡の時のように、あっさり降伏してこなかったので、抵抗され進軍に時間を取られるが、着実に進んでいた。


「さて、次はワクマクロか。ここを攻略すればサムクを攻略出来るな」


 敵の拠点を落とした後、軍議が始まった。


 ワクマクロは、サムク郡の中心都市であるサムク付近にある地域だ。


 サムクを攻略するにはワクマクロ砦を落とす必要がある。

 さほど名の知れた砦ではないが、当然砦内にも魔法の罠が仕掛けられているだろう。事前に城に忍び込んで罠を解除するのは困難であるため、砦を落とすのには工夫が必要になってくる。


 すでに、ワクマクロに降伏勧告は行ってあるようだが、返答は来ない。


 ワクマクロの兵たちは、砦に立てこもり戦う構えを見せている。

 こちらの進軍を少しでも遅らせるため、奮闘するつもりだろう。


「ルメイル、先鋒としてワクマクロに攻撃を仕掛けるのだ」

「了解しました」


 ルメイルはお辞儀をして、返答をした。


 ワクマクロ攻めの先鋒はルメイルが担当する……

 とういうことは、ついに本格的な戦を経験することになりそうだな。


 今まではほかの兵たちが戦うだけで勝負がついていたため、私たちの出番はなかったからな。


「アルス、出撃の準備をするぞ」

「はい」


 私はルメイルたちと一緒に出撃の準備を始める。


「今回、我らだけであっさりとワクマクロを落としたら、クラン様も喜ぶだろうし、我らの名も高まるであろう。アルス、何か案はないだろうか?」


 ルメイルからそう質問された。


「そうですね……今は分からないので考えましょうか」


 いきなりそんなことを聞かれても、案などあるわけない。


「リーツ、お前は何か案はないか?」

「そうですね……向こうの戦力状況と、砦の情報などがないと案と言っても難しいですね」

「ワクマクロ砦は、それほど防壁も高くなく、兵士も多くは収容できるほど規模の大きな砦ではない。それに魔法に対する対応が甘いようだ」


 ルメイルが砦の情報を教えてくれた。


「なるほど……それならば魔法兵を中心に攻めるのが合理的なようですね」


 こちらにはシャーロットもいるため、魔法への対策に難があるというのなら、それが一番だろう。


「ところで具体的にどう対策が甘いのでしょうか?」

「魔法に対する城の対策としては、同じく魔法兵を使うのが一般的だ。防衛用の魔法を使う必要がある。城の防衛に使う触媒機には特別な巨大な物を使用する。そうしなければ、防衛魔法の防御力が下がるうえに、守れる範囲も狭くなるからな。塔と同じくらいの大きさの触媒機を使用して、それを防衛に使っている。カナレ城も元々作っていた塔を触媒機に改造してあるのだ」


 そんなに大きな触媒機を作っていたのか。

 触媒機の小型、中型、大型の三つだけだと思っていたが、城を防衛する用の巨大な触媒機もあるのだな。

 カナレ城にある塔は、今思えば変な文字がびっしり書き込まれていた気がする

 気にも留めてなかったが、あれで塔を触媒機にしているのだろう。


「斥候が持ち込んだ情報によると、ワクマクロ砦にも大型の触媒機はあるが、模様を見る限り少し技術的に遅れている触媒機であるようで、あれでは防衛魔法の防御力が低く、守り切れないだろう、とのことだ」

「なるほど……こちらには優れた魔法兵であるシャーロットがいます。彼女を存分に活用すれば、楽に落とせるかと思います」

「そうであるな。私も一応魔法兵の育成には力を注いでおる。まあ、シャーロットほどのものはおらぬがな。大型の触媒機と魔力水をクラン様にいくつかお借りして、攻めるとしようではないか」


 ルメイルはクランに大型触媒機を借りに行き、無事許可が出たようだ。


「それでは出撃する!」


 大型の触媒機を借りたあと、兵を引き連れワクマクロ砦へと進軍を開始した。




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