第87話 帰還
「アルス様のおかげで、危ないところを何とかなりました。ありがとうございます」
交渉が終わった後、ロビンソンがお礼を言ってきた。
「咄嗟に思いついたので、お役に立てたようでよかったです」
交渉ではリシアを連れてきただけで、特に私自身は役に立っていたわけではなかったので、少しは役に立ててよかった。
「リシア様もありがとうございました。事前に皇帝陛下への忠誠をアピールしたことが、かなりのプラス要素になりました。私だけでは交渉の成立は厳しかったかもしれません。とにかく交渉が成立して安心しました。これで戦の勝利を大きくこちらに引き寄せることになったでしょう」
ロビンソンがほっと胸を撫でおろす。
「次はサイツに交渉をしに行くのでしたね」
「あ、その件ですが、交渉が成立した場合、お二人はサイツに行かず、ミーシアンに戻るようクラン様からお達しがありました」
「そうなのですか?」
「ええ。どうもサイツ州内で事件が発生し、また荒れだしたようで、恐らく援軍に来る余裕はなくなっただろうとのことです。ただ一応確認のために私は行きたいと思います」
サイツは情勢が不安定であるが、ここに来て事件が発生したのか。
クランは中々運のいい男であったようだ。
戦の勝敗には実力もそうだが、時の運も重要になるからな。
何だか今回の戦は、勝てそうな気がしてきた。
帰還の準備はもうすでに出来ているとの話だったが、シンへの連絡などやり残していることがあったので、一度時間を貰う。
まずはシンから教えてもらった住居に行き、シンに会って、用事が終わりミーシアンに戻ることを告げた。
「準備は出来てるでぇ。いつでもいける」
私の言った通り、ミーシアンまで行く準備はきちんとしていたようだ。
「では行くか。改めて私はアルス・ローベントだ。これから長い付き合いになるかもしれないが、よろしく頼む」
「よろしくや」
私はシンと握手をした。
そのあと、町で買い物などをする。
ロセルからお土産を頼まれたのでそれを買うつもりだ。
ロセルにだけ買っていくのも何なので、リーツやほかの家臣のおみやげも買っていく。
値段ではなく、こんなもの欲していそうだな……という物をお土産に選んだ。
お土産を購入した後、舟に乗り込みセンプラーへと出港する。
ロビンソンだけは帝都に残り、陸路でサイツ州まで向かうようだ。
そちらのほうが早くサイツに着くようである。
行きと同じくらいの日数で、センプラーへと無事到着した。
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