熟練冒険者の未熟恋愛
@yagasaki
第1話
「『フレイムアロー』!!」
「『ルーンセイバー』!!」
遮蔽物が全くない平原にて、炎を帯びた一条の矢と、輝きを伴った斬撃が打ち出される。向かったその先には人の背丈の十倍はあるであろう犬型モンスター。
ここら一帯では最強と呼ばれる程の強さを誇る怪物だ。
「グゲエェェェェェェェェ!!??」
しかし、それは己に向かってくる二つのエネルギーを避けることすらままならず、絶命する。
本来であれば、これを無事倒せたことに対し、大いに喜びを見せる筈なのだが……
「今倒したのは明らかに俺だな」
「あらー? とうとうおかしくなっちゃったの? 明らかに今のは体の切断によって出た絶叫でしょう?」
先程の莫大なエネルギーを打ち出した男女は手柄を自分のおかげだと主張し、いがみ合っている。
それもそのはず。
ここら一帯で最強格のモンスターといっても、この二人には全くに取るに足らない相手なのである。
体を真っ二つに切断され、皮膚が焼け爛れてしまったモンスターなどには目もくれず、未だいがみ合う。
しかし、しばらくいがみ合った後、少年の方が嘆息する。
「……はぁ、まあいい。ルミアの言い分ももっともだ。今日は譲ろう」
「分かってもらえたようでなによりだわ。依頼も片付いたし、帰りましょう?」
「ああ、そうだな」
そう言って依頼達成の証拠としてモンスターの爪を回収すると、二人は帰路についた。
先程までいがみ合いこそしていたが、この二人実は意外と仲は悪くない。それもそのはず、二人は十年来の付き合いであった。
二人は所謂、幼馴染というやつである。時間の重なりと共に相手への愛も深まっていった。
要はこの二人、両想いなのである。
流石は幼馴染と言うべきか、気持ちに自分の気付いた二人はすぐさま、自分の想いの丈を伝えた。
しかし!
最後の「付き合って下さい」の一言が言えずそのまま平行状態を続かせてしまっていた!
それは偏に誇りプライドの高さ故であろう。冒険者として、華々しい成果を収めてしまっているばかりに後一押しを言うことが出来ないのだ。
十六歳という若さにして「賢者」の名を頂いた少年ーー魔法使い アルネ・クォーカー
同じく十六歳にして「勇者」の名を頂いた少女ーー剣士 ルミア・ルイス
この二人は友達以上恋人未満という関係であった。
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