夜空

タカイ

第1話 …

「死にたい」…その事を初めて思ったのは小学三年生の頃だった。

三年生までの僕は小学校にいくのが毎日楽しみだった、友達と話したり勉強したり僕は順風満帆な生活を送っていた、あのことが起こるまでは……

僕は小学校三年生に上がり少ししたところでイジメにあった内容はランドセルを隠されたりと程度は低いが、それでも僕を絶望させるには十分すぎた、なぜなら一番の親友と思っていた奴がイジメの最前線に立っていたからだ、それからのこと、僕は全く人を信じられなくなった、時折優しくされることはあってもその優しさに裏切られるのが怖くてその場を逃げ出す事がほとんどだった、一人の時間が多くなり僕の趣味は夜空を見上げることになった、夜空はその壮大さで僕がいかにちっぽけで矮小な存在かを教えてくれた、一つ一つ光り輝く星、月、そして宇宙…夜空を見続けて10年、20歳となった僕は今アルバイトをしている、しかし人間不信は消えず未だに人と目を合わせる事ができなかった、ある日アルバイト先に出向いてみるとパートの人達が自分の陰口を言っていた、そんなの気にしなくてもいいと思う気持ちはあるが、やはり気持ちは沈むばかりだった…そんな日は夜空でも見ようとベランダにでたが生憎の雨…仕方なくベッドに横たわると、途端に不安が襲ってきた、「自分はこの先生きていけるのだろうか、やっていけるのだろうか、親は期待できない…」と、行った具合に一気に押し寄せてきた、耐えきれなくなった僕は夜大雨の街中を一人彷徨った…30分程歩き帰ってくると疲労からベッドに倒れ込んでしまった、うとうとと意識が微睡む中で雨の音がやけに煩く感じたのを覚えている。


5年後

僕は大手企業の下請け会社に就職した、そこはいわゆるブラック企業で残業代はでず、休暇返上、睡眠時間が1時間以内が当たり前だった、上司の怒鳴り声が鳴り響く中黙々と仕事を続けるさまは生ける屍といった具合だった。ある日、上司から呼び出しをくらい2時間怒鳴られた、それがトリガーだった、小学校の頃に封印した筈の「死にたい」が咳を切ったように溢れ出してきたのだ、もう耐えられなかった、決行はその日にした、その日僕は最後に夜空を見上げた首に括られた縄とともに、……

散りばめられた星屑が光り輝くいつもとなんら変哲はない美しい夜空だった

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夜空 タカイ @takaisannanoda

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