第2話
晴れという天気は嫌いだ。
いやでもあの日のことを思い出してしまう。 いや、けっしてあの日のことを忘れたいわけではないのだけれども。
というか、忘れようなんて思えるわけがなかった。
時刻は午前10時。学校はもうとっくに始まっているが、やっぱりきょうも行く気にはなれない。中学なんてほとんど行かなかったのに、よく高校に入学することができたよね、なんてよく思う。でも結局、入学式に出席しただけで、それからは一度も学校に足を運んだことはない。環境が変われば何か変わるのかと期待したけれど、僕の心にできた傷は、環境が変わっただけで立ち直れるような浅い傷ではなかったらしい。
あの日から僕は、自分の部屋から出ることはほとんどなくなってしまった。
部屋にあるものといえば、もうずっと使っていない机と椅子。高校の制服。本棚。BGM代わりに使う小さなテレビ。いつも僕が寝ているベッド。
それくらいだ。
ベッド以外、全てホコリをかぶってしまっている。月に一度、僕が寝ている間に母さんが掃除をしに来るけれど、やっぱり月に一度じゃホコリは溜まり続ける一方だ。僕も掃除をしようとは考えたけど、体が動かなかった。何もやる気が起きないのだ。もういっそ掃除なんてしなくていい。ホコリを思いっきり吸い込んで死のうか、なんてことを何度も考えたが、それを実行する勇気は僕にはなかった。
僕はベッドから体を起こし、テレビのリモコンを手にとって電源ボタンを押す。あの日からほとんど運動なんてしていないので、起き上がるだけでもかなり辛い。
テレビに電器が送られ画面に光が灯る。
そこに映し出されたのはニュース番組だった。何もやる気が起きず、やることも(あるにはあるが)ないので今日も一日中寝ていよう。何も知らない人が僕のことを見れば、皆口を揃えて、「ニート」「なさけない」などと僕を罵ると思うけど、僕はそんな言葉に耳を傾ける余裕なんて無い。
『次のニュースです。現在、◯◯市では――』
突然、自分の住んでいる町の名前がニュースに流れてきて、なにか悪いことをしたわけでもないのにドキッとする。
僕は恐る恐るテレビの番組表を開き、今日の日付を確認する。
――どうやら、今年も星の流れる季節が来たようだ。
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